2013年度工学院大学 第1部機械工学科
△現代社会の倫理(Ethics for Our Society)[1103]
2単位 板東 洋介 非常勤講師
- <授業のねらい及び具体的な達成目標>
- 日本倫理思想史上の「道」をめぐる諸思想との対話を通して、現代の日本で生きてゆくための倫理を考える。
「達成目標」 (1) 日本思想の上で伝統的に重んじられてきた「道」の思想についての基本的な知識を修得する。 (2) 日本の「道」の思想を踏まえたうえで、現代の日本で生きてゆくための自分なりの生き方を、自分の言葉で表現できるようになる。
- <授業計画及び準備学習>
- 1. ガイダンス:日本における「道」
2. 仏教における「道」の思想─修行と悟り:道元 3. 武士道における「道」の思想(I)─勝つ技術:『五輪書』 4. 武士道における「道」の思想(II)─成就なき成就:『葉隠』 5. 儒教における「道」の思想(I)─天道と人道 6. 儒教における「道」の思想(II)─人欲と誠 7. 江戸時代の「芸道」(I)─わざと名人 8. 江戸時代の「芸道」(III)─職分論と職人気質 9. 近代のはじまり─機械論的自然観と科学技術の登場 10. 西田幾多郎(I)─「統一」の要求 11. 西田幾多郎(II)─表現的世界と「道」 12. 三木清(I)─ロゴスとパトス 13. 三木清(II)─構想力の論理 14. 授業のまとめ 15.学習成果の確認(試験) 各講義ごとに、(I)講義内容をノートにまとめ、(II)それに基づいて自分の意見を簡単に論述することを、準備学習として求める。
- <成績評価方法及び水準>
- 各単元ごとの授業内小レポートによる平常点(20%)と、「達成目標」で示した二点を問う定期試験(80%)とによって成績を評価し、60点以上の者に単位を認定する。なお、成績評価の詳細については、第一回講義中のガイダンスでより具体的に説明するので、必ず出席すること。
- <教科書>
- なし。授業ごとにレジュメを配布する。
- <参考書>
- 野崎守英『道─近世日本の思想』東京大学出版会、1979
田中久文『日本の「哲学」を読み解く』ちくま新書、2000
- <オフィスアワー>
- 授業の前後、教室または講師室にて。
- <学生へのメッセージ>
- 日本人は伝統的に「道」という言葉が好きです。日本思想史上のさまざまな思想、つまり仏教、儒教、武士道、神道、そして日本に入ってきた近代思想(!)のどれにおいても、「道」という言葉はほとんど西洋における「真理」とひとしいほどの重い意味をこめて使われます。某氏の有名な引退演説に端的に表れているように、今日のわれわれにとっても「道」という言葉は、単なる「道路」の意味以上の、なにほどか倫理的な熱い意味をもっているといえるでしょう。
こうしたさまざまな「道」のうちで人気があったのは、宗教の力の強い古代・中世には修行僧の「道」であり、戦国乱世には侍の「道」でありましたが、平和な江戸時代になると、いわゆる「職人気質」で知られる、ものづくりに携わる職人の「道」も花形のひとつとなりました。受講者の皆様の多くは技術者として社会に巣立ってゆかれることと思いますので、とくに、技術をもって世にある人間の生き方を改めて問い直すような場を提供したいと考えています。
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