2012年度工学院大学 グローバルエンジニアリング学部機械創造工学科

化学I(Chemistry I)[4572]

試験情報を見る] [授業を振り返ってのコメント(学内限定)

2単位
高山 俊夫 非常勤講師

最終更新日 : 2012/12/14

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
工学部の学生として物質・材料について深く理解するために学んでおかなければならない基礎科目の1つとして「化学」がある。化学の分野には原子・分子に着目することによって化学を理解する「化学I」とその応用としての「化学II」がある。工学部の学生として先ず原子・分子の世界を学ぶことによってあらゆる分野の学問に適用され応用されることが出来る。原子・分子とは現在の言葉で言えば、ナノサイズの世界を創造できるようにすることであり、それを理解することが目標となる。「モル」とか「アボガドロ数」の概念を学習することで反応の機構が理解されてくる。暗記する必要はないが、理解し胸に落ちるまでの繰り返しの自己学習が求められる。履修する前と後で物質・材料の見方が違ってきたなあ!?と思わせるように講義する。JABEEの履修条件も考慮すること。

<授業計画及び準備学習>
1  
ガイダンス:高校までに学んできた化学についてのアンケートをとり、「化学」とはなにか?生物資源科学部の学生として何故化学が必要なのか?のデイスカッションを行う。「原子のおいたち」についての40分に及ぶビデオを鑑賞する。宇宙は水素、ヘリウムの世界であるが、どうして鉄やウランが生成されたかの疑問が解ける。
2  
電子軌道の型:高校まではボアーの原子モデルで学んできたが、電子の存在の説明が不明確であった。そこで、近年登場してきた量子化学を用いて電子の世界を説明することを試みる。シュレデンガーの波動方程式が何故必要なのかを解説して、不確定性原理を理解し、最終的に電子の形は確率としてのみ扱われることを理解する。
3  
電子配置と物質量:量子化学で得られた電子の量子数から電子の配置を理解する。その配置こそが周期律に則って周期表を形成していることを学ぶ。メンデレーフの周期表について説明する。原子量と分子量について学び、イオンでは式量と言うことを理解する。モルとは何か?の疑問を解く。

化学結合(1) イオン結合:電子の配置が周期的に異なることによって派生するイオン化ポテンシャルエネルギーや電気陰性度について解説する。それからポーリングの電気陰性度について学び、電気陰性度の差が大きな元素間の結合がイオン性結合であることを理解する。合わせて水素結合などの分子間に働く力を理解する。
5  
化学結合(2) 共有結合:メタンの構造・性質を電子の軌道の重なりとして捉えることによって理解する。水素が分子として存在する理由について簡単な分子軌道法を用いて解説する。ヘリウムが分子として存在しないのは何故か?の解説をする。合わせてルイスの配位結合、ベンゼンの共鳴構造を説明する。
6  
化学結合(3) 共有結合への考察:分子構造を混成軌道から説明する。メタン、アンモニア、水、エチレン、アセチレンの分子模型について理解する。分子の結合エネルギーの大きさは結合距離と相関があることを学ぶ。合わせて水の沸点が同族水素化物の沸点より高いのは水素結合が生じていることを理解する。
7  
気体の性質:気体は分子の運動が極めて大きいので固体と液体とは大きく状況が異なる。そこで気体の体積の圧力・依存性について説明する。理想気体の性質と実在気体の性質の違いについて解説する。混合気体の物質量は混合気体の分圧によっていることを説明する。
8  
相変化と水溶液:相変化と状態図について解説する。水の三重点について説明する。この温度を基準として絶対零度が決められた。純物質の蒸気圧について考察する。液体としての水と分子としての水について水クラスターの概念から解説する。水に溶けるとは水和するということであることを理解する。
9 
固体の性質:結晶と結晶構造において、面心立方格子と体心立方格子の違いを図で示す。原子の充填率はそれぞれ74%、68%でありこのことが金属の硬さ、柔らかさに反映している。金属は温後が上がると抵抗が大きくなり、半導体は温度が上がると抵抗が小さくなることを示す。液晶表示の作動原理について説明する。
10 
反応速度と化学平衡:速い反応・遅い反応とは何かを考える。反応速度と反応速度定数について説明する。反応系の遷移状態と活性化エネルギーについて理解し、反応速度を高める条件について解説する。化学平衡とは何かを理解しその平衡定数を計算する。平衡反応についてのルシャトリエーの原理について説明する。
11  
酸と塩基:酸と塩基の定義について説明する。水のイオン積とpHについて理解し、pHの計算をマスターする。酸・塩基の強さを理解するための電離度と電離定数について説明する。塩が加水分解すると酸性や塩基性を示す理由について考察する。緩衝液の機構を考える。
12  
酸化と還元:酸化数とは何かについて考える。イオン化傾向と電池の原理を学ぶ。ダニエル電池を理解する。標準電極電位から酸化剤・還元剤について説明する。実用電池を概観し、リチウムイオン二次電池や燃料電池の概念を理解する。電極の定義のアノード、カソードを理解する。電気分解の実際を概観する。
13
熱エネルギーと化学反応:熱とは?を考える。エネルギー保存則の熱力学第一法則を理解する。化学反応の発熱と吸熱とは何か?について理解する。反応エンタルピーと熱化学方程式について説明する。ヘスの法則について理解する。熱力学第二法則を理解する。エントロピーの増大とは何か?乱雑とは何か?を理解する。
14
基礎的な有機化合物:有機化合物の特徴と分類を整理する。脂肪族化合物についてどのようなものが有るか概観する。芳香族化合物について概観する。その反応性について理解する。ベンゼンは二重結合が多いにも係わらす何故安定なのか共鳴の原理から考える。石油からナフサを得るクラッキングについて理解する。
15 
学期末試験

<成績評価方法及び水準>
小テスト・レポート20点および定期試験80点による総合評価。元素の周期性、電子配置、電子軌道の型、電気陰性度、イオン結合、共有結合、反応速度、有機化学の基礎、が理解できれば合格(60点)である。

<教科書>
「化学の視点」川泉文男著(学術図書出版)ISBN978-4-7806-0171-8を使用する。

<参考書>
興味のある学生は「チャレンジ化学」水谷 広 著(三共出版)を参考にしてほしい。

<オフィスアワー>
非常勤講師なので、授業開始前か後の時間が好ましい。また質問状を提出することも歓迎する。次週の講義のときに解説することの回答として対応する。

<学生へのメッセージ>
原則、高校時代の化学を選択していないことを前提に授業を行うが、予習を前提とする。また、化学Iを効率よく学ぶために演習問題を解きながら学習することが望ましい。履修条件:高校での化学の修学度は問題としないが、出席は必須条件である。

<備考>
教科書を用いて講義する。理解を深めるために適時演習問題を解く。小テストを繰り返し行なうことによって理解を深める。時間内に理解できなかったことを質問書として受け取り、次週に説明・解説する。視覚に強く訴えるために、パワーポイントを使う。必要に応じてプリントを配布する。

 

このページの著作権は学校法人工学院大学が有しています。
Copyright(c)2012 Kogakuin University. All Rights Reserved.