2012年度工学院大学 第1部情報通信工学科
化学II(Chemistry II)[3565]
2単位 高山 俊夫 非常勤講師
- <授業のねらい及び具体的な達成目標>
- 工学部の学生として物質・材料について深く理解するために学んでおかなければならない基礎科目の1つとして「化学」がある。化学の分野には原子・分子に着目することによって化学を理解する「化学I」とその応用としての「化学II」がある。化学Iを履修した学生は「基礎化学」をマスターした者として、次のステップの「化学の展開」に進むことになる。日進月歩、変化・進展している化学を化学Iで学んだことを踏まえて新規の物質や材料や環境を学ぶことになる。暗記する必要はないが、理解し胸に落ちるまでの繰り返しの自己学習が求められる。履修する前と後で物質・材料・環境の見方が違ってきたなあ!?と思わせるように講義する。
- <授業計画及び準備学習>
- 1
ガイダンス:高校までに学んできた化学についてのアンケートをとり、「化学」とはなにか?工学部の学生として何故化学が必要なのか?のデイスカッションを行う。「元素のおいたち」についての40分に及ぶビデオを鑑賞する。宇宙は水素、ヘリウムの世界であるが、どうして鉄やウランが生成されたかの疑問が解ける。 2 化学結合(1) イオン結合:イオンが何故生成するのかを考える。イオン化エネルギーとはなにか?電子親和力とはなにか?イオン結合とは陽イオンと陰イオンとの結合だけと考えるだけでは正しくなく、陽イオンと陰イオンから規則正しい構造が繰り返された巨視的結晶が形成される過程について考えることが必要である。 3 化学結合(2) 共有結合と金属結合:2つの原子が何個かの価電子を出し会い、その出し合った電子を共有することにより2つの原子間に生ずる結合を共有結合という。 新しい理論の分子軌道法の考えで水素分子の形成を理解する。そして何故ヘリウム分子は存在しないかを理解する。分子軌道法を発展させて金属結合についても講義する。 4 化学結合(3) 混成軌道と水素結合:分子構造を混成軌道から説明する。メタン、アンモニア、水、エチレン、アセチレンの分子模型について理解する。水の沸点が同族水素化物の沸点より高いのは水素結合が生じていることを理解する。 5 固体の性質:結晶と結晶構造において、面心立方格子と体心立方格子の違いを図で示す。原子の充填率はそれぞれ74%、68%でありこのことが金属の硬さ、柔らかさに反映している。金属は温後が上がると抵抗が大きくなり、半導体は温度が上がると抵抗が小さくなることを示す。液晶表示の作動原理について説明する。 6 反応速度と化学平衡:速い反応・遅い反応とは何かを考える。反応速度と反応速度定数について説明する。反応系の遷移状態と活性化エネルギーについて理解し、反応速度を高める条件について解説する。化学平衡とは何かを理解しその平衡定数を計算する。平衡反応についてのルシャトリエーの原理について説明する。 7 酸と塩基:酸と塩基の定義について説明する。水のイオン積とpHについて理解し、pHの計算をマスターする。酸・塩基の強さを理解するための電離度と電離定数について説明する。塩が加水分解すると酸性や塩基性を示す理由について考察する。緩衝液の機構を考える。 8 酸化と還元:酸化数とは何かについて考える。イオン化傾向と電池の原理を学ぶ。ダニエル電池を理解する。標準電極電位から酸化剤・還元剤について説明する。実用電池を概観し、リチウムイオン二次電池や燃料電池の概念を理解する。電極の定義のアノード、カソードを理解する。電気分解の実際を概観する。 9 熱エネルギーと化学反応:熱とは?を考える。エネルギー保存則の熱力学第一法則を理解する。化学反応の発熱と吸熱とは何か?について理解する。反応エンタルピーと熱化学方程式について説明する。ヘスの法則について理解する。熱力学第二法則を理解する。エントロピーの増大とは何か?乱雑とは何か?を理解する。 10 原子核エネルギー: 放射性元素とその性質について概観する。放射線の種類と性質について理解する。放射性元素の崩壊について理解する。原子核が崩壊するときの、半減期について計算する。遺物の年代測定について説明する。核の結合エネルギーと核分裂について、原子炉について解説する。核分裂の連鎖反応が開始される臨界について説明する。 11 高分子化合物:高分子の合成法を概観する。高分子化合物の特徴とはなにかについて理解する。具体的に繊維について概観する。PETボトルなどの合成樹脂について学ぶ。分子内に不飽和結合をもつ高分子のゴムについて理解を深める。現在注目されている機能性高分子について概観する。 12 生体関連物質:アミノ酸、タンパク質、脂質を理解し、酵素と核酸について学ぶ。遺伝情報・伝達のDNAとRNAの関係を学び、タンパク質合成と遺伝情報についてマスターする。DNAの二重らせんが形成される理由を理解する。 13 農薬、医薬品と食品添加物:生活に直結している化学製品について講義する。肥料と農薬、医薬品、食品添加物、洗剤について概観する。 14 大気環境と土壌環境の化学:大気・水・大地での化学物質を概観し、環境とエネルギーについて考える。酸性雨・オゾンホール・ 地球温暖化を理解する。河川の富栄養化について考え、地殻と土壌の化学について考える。 15 学期末試験
- <成績評価方法及び水準>
- 小テスト・レポート20点および定期試験80点による総合評価。化学結合と分子構造、固体の性質、化学反応の速度・エネルギー、酸と塩基、酸化・還元反応、熱エネルギーと化学反応、原子核エネルギー、高分子化合物の構造と性質、生体関連物質、農薬と医薬品、環境と化学、水環境と土壌環境の化学が理解できれば合格(60点)である。
- <教科書>
- 「化学の視点」川泉文男著(学術図書出版) ISBN978-4-7806-0171-8 を使用する。
- <参考書>
- 興味のある学生は「チャレンジ化学」水谷 広 著(三共出版)を参考にしてほしい。
- <オフィスアワー>
- 非常勤講師なので、授業開始前か後の時間が好ましい。また質問状を提出することも歓迎する。次週の講義のときに解説することで回答として対応する。
- <学生へのメッセージ>
- 原則、高校時代の化学を選択していないことを前提に授業を行うが、予習を前提とする。また、化学IIを効率よく学ぶために演習問題を解きながら学習することが望ましい。履修条件:化学Iの修学度は問題としないが、出席は必須条件である。
- <備考>
- 教科書を用いて講義する。理解を深めるために適時演習問題を解く。小テストを繰り返し行なうことによって理解を深める。時間内に理解できなかったことを質問書として受け取り、次週に説明・解説する。視覚に強く訴えるために、パワーポイントを使う。必要に応じてプリントを配布する。
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