2012年度工学院大学 第1部応用化学科

現代社会の倫理(Ethics for Our Society)[1103]

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2単位
岡田 大助 非常勤講師

最終更新日 : 2012/12/14

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
「ねらい」 日本倫理思想史上の主要なテキストとの対話を通して、現代社会を生きる倫理を考える。
「達成目標」 自己とは何か、他者への誠実とは何か、親子の情愛や男女の間柄とは何か、神とはいかなる存在か等、倫理学上の様々な問いに対して、講義で紹介した思想を踏まえつつ、自分の言葉で答えられるようになること。

<授業計画及び準備学習>
1.ガイダンス 「近代」と「現代」 
2.夏目漱石の倫理思想(1)「現代日本の開花」と「私の個人主義」
3.夏目漱石の倫理思想(2)小説『こころ』に見るエゴイズムと個人主義の限界(1)先生
4.夏目漱石の倫理思想(3)小説『こころ』に見るエゴイズムと個人主義の限界(2)先生とK
5.夏目漱石の倫理思想(4)小説『こころ』に見るエゴイズムと個人主義の限界(3)Kの自殺
6.『平家物語』の倫理思想(1)実盛 武士と名
7.『平家物語』の倫理思想(2)兼平 主従の契り
8.『平家物語』の倫理思想(3)維盛(1) 妻子への情愛
9.『平家物語』の倫理思想(4)維盛(2) 滝口入道と横笛の悲恋
10.『平家物語』の倫理思想(5)重衡(1) 奈良炎上 罪と救済
11.『平家物語』の倫理思想(6)重衡(2) 重衡と女たち  
12. 日本神話の倫理思想(1)ユダヤ・キリスト教の神と日本の神々
13. 日本神話の倫理思想(2)和辻哲郎『日本倫理思想史』の神話解釈 神の四分類 究極の神の不在
14. 日本神話の倫理思想(3)和辻哲朗『日本倫理思想史』の神話解釈 清明心の道徳
15. 学習成果の確認(試験)
なお、各授業ごとに(1)授業のポイントのまとめ、(2)それについての自らの意見の簡単な論述、を準備学習として課す。各自、ノートに実施すること。

<成績評価方法及び水準>
「達成目標」に達しているかを問う定期試験(100点)によって成績を評価、60点以上の者に単位を認める。問題は、(1)講義の要約、(2)それに関する問いを立て自分の考えを論述すること、の二点を課す。なお、成績評価の詳細については、第一回目の講義でより具体的に説明するので、必ず出席すること。

<教科書>
なし。プリントを配る。

<参考書>
和辻哲郎『日本倫理思想史(一)』岩波文庫
佐藤正英『日本倫理思想史』東京大学出版会
相良亨「『平家物語』の基調」『相良亨著作集第四巻』所収、ぺりかん社。

<オフィスアワー>
授業前後、教室または講師室にて。

<学生へのメッセージ>
 国際化する現代社会を生きる我々が、生きるよりどころとしての「倫理」について考えるに当たり、他国の考え方に開かれていることの重要性は論を待ちません。しかし、そのためには、同時に、自らの内なる伝統を自覚することが必要です。ところが今日、後者を顧みる機会はほとんどありません。そこで、本講義では、日本の倫理思想史に焦点を当てて学習します。講義の前半では、思想史においては現代と連続するとされる近代の、自己を中心とする思想とその問題点について、夏目漱石のテキストを素材として考えてゆきます。後半は、それと比較しながら、(1)『平家物語』に見ることのできる他者との関わりを重んじる思想、(2)『古事記』に記された日本神話における神についての考え方と倫理思想を、見てゆきます。現代社会の倫理といっても、現代のことだけで考えるのがよいとは限りません。自らの内なる伝統を正確に理解しながら、それを安易に否定するのでも肯定するのでもなく、それと冷静に対話してゆくことで、実りある思索ができることを、実感してほしいと思います。

 

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