2011年度工学院大学 第1部環境エネルギー化学科

化学技術者の倫理(Ethics for Chemical Engineers)[5D02]

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2単位
中村 昌允 非常勤講師

最終更新日 : 2012/03/09

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
日本の製造業の生き残りが問われている。化学産業は新しい物質・技術を生み出すことによって発展してきた。今後とも技術革新が必要であるが、そこには未知の危険が潜んでいる。
 技術者は、自分が生み出したものがもたらす結果に対して責任があり、科学技術の危害防止,災害からの防止,公衆の福利に努めねばならない。一方では技術者は組織に属し、また顧客の依頼に応えていく必要がある。そのときにジレンマに陥る事がある。そのようなときの行動基準、そして判断の支えとなるものを身に付けたい。
1.技術開発の社会に及ぼす影響の大きさと関わりを理解し、技術者が負っている社会的責任を自覚し、
  プロフェッショナルとして行動できる技術者になるための倫理的考え方の基礎を学ぶ。
2.それぞれの局面でどう考え、どう行動するかを、自分で考え、自分で判断できるようになるために、
  具体的事例を通して、その対処の仕方を学ぶ。
[達成目標]
  (1)化学産業の歴史と特徴を知り、今後の生き残りのための課題を説明できる。
  (2)技術者倫理が必要とされる背景と重要性を理解し、説明できる。
  (3)化学物質の安全管理と製造業における安全確保の心構えについて説明できる。
  (4)科学者・技術者の社会での役割と責任を自分の言葉で説明できる。
  (5)内部告発,説明責任,製造物責任,リスクマネジメントなど技術者行動に関する用語を理解し     説明できる。
  (6)21世紀の技術者のあり方について自分の考えを表明できる。

<授業計画及び準備学習>
<授業計画>
第1回 ガイダンス
第2回 技術者倫理は何故必要か
 科学技術の発展と技術者の社会的責任が求められるようになった背景、化学技術者のプロフェッショナルとしての行動、相互依存関係などについて学ぶ。
第3回 化学産業の特徴と発展の歴史  
 日本の国際競争力は、スイスのIMD評価で27位である。化学産業は生き残りをかけて、大きな変革期に来ている。化学産業の特徴は新たな素材と技術を開発することによって成り立っている。これからの生き残りについて考える。
第4回 事例から学ぶ行動(ケーススタディ)
 事前に与えた事例について討議し、技術者のジレンマについて考える。
第5回 プロフェッショナルとしての技術者の行動―1(内部告発)
 チャレンジャー号爆発事故、シテイコープビルの設計を取り上げ、技術者の行動を考える。
 事故を予知していた技術者の行動と内部告発に至った経緯を知り、技術者のプレゼンテーションの重要性と内部告発について考える。内部告発には基準がある。
第6回 プロフェッショナルとしての技術者の行動―2 (説明責任)
 福島原発を取り上げ、そこでの技術者の行動と責任について考える。
第7回 プロフェッショナルとしての技術者の行動―3(リスクマネジメント)
 人体に絡んだ事故として、雪印集団食中毒事件、薬害エイズ、を取り上げ、事前の対応としてのリスクマネジメントの考え方、ならびに事故後の危機管理について学ぶ。ここで取り上げる事件はいずれも人為的判断が関与したために、事故やトラブルで済む事が、事件になってしまった。
になってしまった。
第8回 プロフェッショナルとしての技術者の行動―4(変更管理)
 産業事故の多くが変更管理に起因している。JCO臨界事故を事例に変更管理について考える。
第9回プロフェッショナルとしての技術者の行動―5(事故とヒューマンエラー)
 事故はヒューマンエラーによって起きるといわれるが、ヒューマンエラーは結果であって原因ではない。JR西日本脱線事故を事例に考える。
第10回プロフェッショナルとしての技術者の行動―6(製品事故と製造物責任)
 自動回転ドア、パロマ瞬間湯沸かし器事故を取り上げ、技術者の責任について考える。
第11回プロフェッショナルとしての技術者の行動―7(企業不祥事と技術者)
 三菱自動車のリコール問題を取り上げ、企業不祥事といわれるが、そこでの技術者の責任について考える。
第12回プロフェッショナルとしての技術者の行動―8(技術者のジレンマ)
 多くの判断は現場で行われる。その際に技術者はどのようなジレンマを感じるか?
第13回環境倫理と循環型社会
21世紀は20世紀と比較してどのような技術が必要とされるかを、地球環境問題、特に温暖化に絡むCO2
排出量削減、エネルギー資源枯渇、地下資源の枯渇、食糧問題の台頭などを、一緒に考える。
21世紀の技術開発が、循環型社会への移行が必然である事、新たな資源からではなく、これまで作られた人工物から「モノ」を創り出す新たな仕組みに変革せざるを得ない事を認識する。
第14回化学物質管理
化学物質管理の基本について紹介する。
第15回期待される技術者
企業での研究開発経験をもとに、研究から開発、事業化、製品化に至る「死の谷」を紹介し、これを乗り越えるための先人達の思想を紹介する。 併せて、技術者として生きていくための倫理規範を説明する。

<成績評価方法及び水準>
講義の理解度をチェックするために、毎講義ごとに、小感想文を提出する。
講義出席7割以上の学生の成績を評価する。(7割に満たない場合は評価しない)
講義ごとに、毎回、小レポートを提出し、期末レポートと合わせて成績を評価する。
評価割合は期末レポート50%、毎回の小感想文50%

<教科書>
講義ごとに配布

<参考書>
中村昌允「事故から学ぶ技術者倫理」工業調査会
第3版「科学技術者の倫理」その考え方と応用 社団法人日本技術士会編 丸善

<オフィスアワー>
講義終了後、質問時間をとる

 

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