2011年度工学院大学 第1部応用化学科
△近代の文学(Modern Japanese Literature)[1415]
2単位 永野 宏志 非常勤講師
- <授業のねらい及び具体的な達成目標>
- 違和感、不安、恐怖、パニック・・・安定状態から離脱すると生じるこれらの感覚や事態を、恐怖小説を題材として、管理社会が強化され個々の生活が不安定さを増す現代の生について考察する。
今日、メディアは現実を情報によって地球大に肥大させている。このサイバーな現実は、光の速度にモノの重さを持つ物流が追いつこうとしてシステム全体にアクシデントが生じ、日常を一気に崩壊させる危険を孕む。クリック一つで世界に繋がっているのにそれに追い付けない生きた身体は悲鳴をあげ続けている。何事も先回りされ選択肢が与えられて、その中から選ぶのが自由であるかのように思いこまされているこの閉塞感は、出口なしの世界をさまよう恐怖小説の登場人物たちに似ている。 前期のテーマは、集団的無意識が作る恐怖である。人間が中心になった近代世界にその外に位置する自然、死者、犯罪、病気等が襲う恐怖の表象(キャラクターの作られ方)と破壊のパターン(パニックの作られ方)を、19世紀から20世紀における恐怖小説、映画から各テーマごとに検討し、楽しげなキャラクターに満ちたこの現実が、なぜ不安と恐怖に包まれるのかを、虚構から逆に捉え直すことができるようにするのがこの講義の目標である。 後期と相関しているが、単独で受講しても差し支えはない。なおテーマの性質上感情を左右するシーンを扱う場合もあるので、あらかじめご了承いただく。
- <授業計画及び準備学習>
- 第1回 イントロダンション・・・恐怖が作り出すキャラクターと近代のサンプル
準備学習:ゴジラと河童がなぜあのキャラクターになったのか考えておくこと 第2回 妖怪・お化け・幽霊をキャラクターとして見た場合の違い(1)-水木しげるから- 準備学習:前回の復習 第3回 妖怪・お化け・幽霊をキャラクターとして見た場合の違い(2)-小泉八雲と泉鏡花から- 準備学習:前回の復習 第4回 妖怪・お化け・幽霊をキャラクターとして見た場合の違い(3)-江戸以来の怪談から- 準備学習:前回の復習 第5回 西洋と日本のキャラクターの違い(1)-お化け・妖怪と妖精- 準備学習:前回の復習 第6回 西洋と日本のキャラクターの違い(2)-幽霊とゾンピ- 準備学習:前回の復習 第7回 西洋と日本のキャラクターの違い(3)-その他(吸血鬼・狼男など)- 準備学習:前回の復習 第8回 中間的まとめ・・・自然由来・人間由来・その他の由来のキャラクターと文化 準備学習:前回の復習 第9回 キャラクターの住む環境とパニックの作られ方(1)・・・建物または辺境 準備学習:これまで自分が見たパニック小説、映画のリストを作っておくこと 第10回 キャラクターの住む環境とパニックの作られ方(2)・・・都市または移動空間 準備学習:前回の復習 第11回 キャラクターの住む環境とパニックの作られ方(3)・・・地球規模の時空 準備学習:前回の復習 第12回 キャラクターの住む環境とパニックの作られ方(4)・・・宇宙空間(SF小説) 準備学習:前回の復習 第13回 キャラクターとパニックの関係(1)・・・宗教と文化による作り方の違い 準備学習:前回の復習 第14回 キャラクターとパニックの関係(2)・・・どの時空までキャラクターは存在可能か 準備学習:前回の復習 第15回 教場試験・・・自作のパニック小説を書く 準備学習:下書き等の用意をしておくこと
- <成績評価方法及び水準>
- 毎回講義後半の10分程度その回のテーマに即した課題をその場で記述して平常点(50点)とし、さらに、期末試験を実施し(50点)、両者併せて総合的に評価する。また、私語、居眠りのたぐいは、大学にはいないと判断し、その場で単位なしとみなす。
- <教科書>
- 対象とする小説が複数であるので、必要な文献は、プリントまたはDVD、ビデオなどでもそのつど提示する。
- <参考書>
- 鷲巣義明『恐怖の映画術』(キネマ旬報社)、『別冊太陽』日本恐怖映画特集、トマス・ホッブズ『リヴァイアサン』(中公クラシックス)、ジョルジュ・バタイユ『内的体験』(平凡社ライブラリー)、柳田國男『妖怪談義』(講談社学術文庫)
- <オフィスアワー>
- 教員室にて、講義の前後10分程度
- <学生へのメッセージ>
- テーマの関係上、気分を左右する情報を提示する場合があるので、じゅうぶんの考慮の上で受講されたい。
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