2011年度工学院大学 第1部機械システム工学科

作家とその世界(Works of Literary Giants)[1313]

試験情報を見る] [授業を振り返ってのコメント(学内限定)

2単位
永野 宏志 非常勤講師

最終更新日 : 2012/03/09

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
違和感、不安、恐怖、パニック・・・安定状態から離脱すると生じるこれらの感覚や事態を、恐怖小説を題材として、管理社会が強化され個々の生活が不安定さを増す現代の生について考察する。
今日、メディアは現実を情報によって地球大に肥大させている。このサイバーな現実は、光の速度にモノの重さを持つ物流が追いつこうとしてシステム全体にアクシデントが生じ、日常を一気に崩壊させる危険を孕む。クリック一つで世界に繋がっているのにそれに追い付けない生きた身体は悲鳴をあげ続けている。何事も先回りされ選択肢が与えられて、その中から選ぶのが自由であるかのように思いこまされているこの閉塞感は、出口なしの世界をさまよう恐怖小説の登場人物たちに似ている。
後期のテーマは個人に起こる恐怖である。扱う時代は1995年から2001年にかけて突入したテロの現代である。これまでの「Horror」と違い「Terror(テロ、恐怖)」としての恐怖小説を取り上げる。題材は1930年代の『ドグラ・マグラ』から『呪怨』、2000年代の『着信アリ』、Jホラー・シリーズなどの日本のものから、海外の恐怖小説、映画(アメリカ、イギリス、スペイン、韓国など)である。恐怖小説・映画の主人公は恐怖小説を読んだことがないから恐怖に陥る。そのパターンを疑似体験することで、現実に起こる不安や恐怖に対する態度を養うのがこの講義の目的である。
前期と相関しているが、単独で受講しても差し支えはない。なおテーマの性質上感情を左右するシーンを扱う場合もあるので、あらかじめご了承いただく。

<授業計画及び準備学習>
第1回    心身状態の変化(1)・・・違和感・不安・恐怖・パニック:恐怖小説全体の流れ
   準備学習:今まで見た恐怖映画・恐怖小説をリストしておくこと
第2回    心身状態の変化(2)・・・違和感・不安・恐怖・パニック:恐怖に関する東西比較
準備学習:前回の復習
第3回    心身状態の変化(3)・・・違和感・不安・恐怖・パニック:近代の因果と現代の無差別
準備学習:前回の復習
第4回    環境の変化(1)・・・出口なし(a)-密室としての空間-
準備学習:前回の復習
第5回    環境の変化(2)・・・出口なし(b)-先に進まない時間-
   準備学習:前回の復習
第6回    環境の変化(3)・・・出口なし(c)-迷宮としての世界-
準備学習:前回の復習
第7回    個としての私の変化(1)・・・心理-憑依・狂気・二重人格化-
   準備学習:前回の復習
第8回    個としての私の変化(2)・・・身体-変形・変身・融合・感染-
   準備学習:前回の復習
第9回    個としての私の変化(3)・・・存在-失踪・不在化・消失・死-
   準備学習:前回の復習
第10回   他者に管理される生(1)・・・監視される日常
   準備学習:前回の復習
第11回   他者に管理される生(2)・・・凌辱される日常
   準備学習:前回の復習
第12回   他者に管理される生(3)・・・操作される日常
   準備学習:前回の復習
第13回   残酷さについて・・・フラット化する世界における無差別化する恐怖(1)
   準備学習:前回の復習
第14回   残酷さについて・・・フラット化する世界における無意味化する存在(2)
   準備学習:前回の復習
第15回   教場試験・・・2001年以後の恐怖小説を書く
   準備学習:下書き等の準備をしておくこと

<成績評価方法及び水準>
毎回講義後半の10分程度その回のテーマに即した課題をその場で記述して平常点(50点)とし、さらに、期末試験を実施し(50点)、両者併せて総合的に評価する。また、私語、居眠りのたぐいは、大学にはいないと判断し、その場で単位なしとみなす。

<教科書>
対象とする小説が複数であるので、毎回プリントを配布し、必要な文献はDVD、ビデオなどでもそのつど提示する。

<参考書>
鷲巣義明『恐怖の映画術』(キネマ旬報社)、マルティン・ハイデガー『存在と時間』(中公クラシックス)、M・マクルーハン『メディア論』(みすず書房)、A・ネグリ+M・ハート『<帝国>』(以文社)、森岡正博『無痛文明論』(トランスビュー)

<オフィスアワー>
教員室にて、講義の前後10分程度

<学生へのメッセージ>
テーマの関係上、気分を左右する情報を提示する場合があるので、じゅうぶんの考慮の上で受講されたい。

 

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