2011年度工学院大学 第1部機械工学科

材料力学及演習II(Exercise of Strength of Materials II)[5354]

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3単位
立野 昌義 教授  
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最終更新日 : 2012/03/09

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
“材料力学及演習I”では,棒・軸・はりを一次元弾性材料モデルと仮定して取り扱い,モデル化の工夫により力学的挙動(引張・圧縮・せん断応力とひずみ)を把握できることを学習した.しかしながら,実際の機械や構造物の変形・破壊形態は,ねじり・座屈・応力集中や曲げとねじりなど組合せ応力などにより異なる挙動を示す.機械や構造物を安全に設計するためには,弾性と塑性などを含めた複雑な応力状態を把握し,強度評価する方法を理解しておく必要がある.
本授業では,材料を扱う際の少し進んだ考え方(ねじり,座屈,曲げ,曲げとねじりが同時に作用する組合せ応力およびひずみエネルギーとエネルギー原理など)や材料試験法や材料の強度と許容応力を体系的に学ぶ.さらに材料設計や技術や安全に関連した例題や演習問題に着手し,材料設計の基本的な考え方を習得する.

(JABEE学習・教育目標)
「機械工学エネルギー・デザインプログラム」:(B)○,(C)○,(D)◎

(JABEEキーワード)
<材料の強度と許容応力>(6.0),<ねじり>(3.0),<曲げ>(1.0),<応力集中>(0.5),<座屈>(6.0),<組み合わせ応力>(6.0),<多軸応力>(3.0),<ひずみエネルギーとエネルギー原理>(9.0),<破壊>(0.5),<疲労>(1.0),<クリープ>(0.5).

(前提となる基礎知識と習得後の展開)
本科目を履修する前に, “工業力学及演習I,II”を履修し,力学の基礎になる考え方(質点の力学と剛体の力学)を,“材料力学及演習I”を履修し,材料を扱う際の基礎的な考え方(応力とひずみ,熱応力,衝撃応力,ひずみエネルギーとエネルギー原理,曲げなど)を習得しておくことが望ましい.本科目習得後には,考えられる多くの機械とそれを構成する材料の応力とひずみ挙動や構造の剛性と強度が明らかになり,得られた知識は機械の設計および強度評価に応用することが可能になる.さらに,“機械設計総合演習”により,材料力学と実際の機械設計の関連を把握でき,デザイン能力の習得を行うことができる.

<授業計画及び準備学習>
1.前期の復習と軸のねじり
材料力学及演習IIの学習を進める上で材料力学及演習Iの知識が必要となる.このため,前期の復習を簡単に行う.
ねじりモーメントとねじり変形,軸断面内に生ずるせん断応力との関係について学ぶ.

2.伝動軸のねじりモーメントとせん断応力
伝動軸を設計する際,軸の許容せん断応力以下になるよう強度面から設計する場合と,軸のねじり角を許容値以下になるように精度面から設計する場合がある.回転運動により動力を伝える軸直径をどのように設定するかを学ぶ.

3.斜面上の応力と組合せ応力
一様な断面の棒に荷重が作用するときの斜断面上の応力と組合せ応力について学ぶ.

4.組合せ応力の具体例
曲げとねじりを受ける軸あるいは軸力(引張・圧縮)と曲げ/ねじりを受ける軸などを例にとり,この軸に生ずる主応力についての算出方法を学ぶ.

5.ひずみエネルギーに関する諸定理
ひずみエネルギーとエネルギー原理およびひずみエネルギーに関する諸定理(相反定理・カスチリアーノの定理)について学ぶ.

6.カスチリアーノの定理
ひずみエネルギーとエネルギー原理およびレーリー・リッツ法(近似解法)に関して学ぶ.

7.オイラーの座屈荷重・長柱の実験公式
圧縮荷重が作用する長い棒や薄い板では,座屈しないように設計することが重要な問題となる.ここでは,圧縮を受ける棒(柱)の座屈について学ぶ.さらに,塑性座屈問題や長柱の実験公式などを紹介する.

8.材料力学の応用1(厚肉円筒管・板の曲げ問題およびトラス・ラーメン)
強度設計の基礎(薄肉円筒管)および厚肉円筒管について学ぶ.集中荷重(応力集中)が作用したり,円筒かくと鏡板などの接合部などの形状では,曲げ応力が発生して板厚内での応力分布が一様であると仮定できなく,板厚内の応力分布を考える必要がでてくる.そこで厚肉円筒が内圧を受ける場合の応力分布について主に学ぶ.また,曲げ応力の生ずる板について学ぶ.トラス・ラーメンの解法についても学ぶ.

9.材料力学の応用2(非線形問題)
機械部品や構造物がどれだけの荷重に耐えられるかを知るため,弾性範囲を越えた応力の下での挙動を知っておくことが重要である.ここでは,軸が降伏応力を越えた領域での塑性挙動について学ぶ.弾性と塑性の取り扱い方法について理解する.

10.学習成果の確認(試験)
1〜7までに学んだ事柄に対するテストを実施する.

11.不静定はり
不静定はりの解法を学ぶ.不静定はりの場合,静力学のつりあい条件式のみで支点反力や曲げモーメントを求めることができない.つり合い条件式の他に変形を考慮しなければならない.

12.はりの応用
はりの応用として,組合せばり,連続ばり,曲りばりを学ぶ.前期に学習したはりの内容に比べるとこれらの内容はやや複雑であるが,実用上大切な問題として取り扱われる.

13.材料の強度と破壊(応力集中)
材料の強度は様々の因子によって影響を受ける.切欠きなどの断面形状が急変するところでは応力集中により,強度は大きく低下する.機械や構造物を安全に設計するためには,複雑な応力状態を把握し,強度評価方法を理解しておく必要がある.材料設計の基本的な考え方を学ぶ.

14.材料の強度と破壊(疲労・弾性破損)
荷重の種類や変動状態により,疲労やクリープおよび破壊が発生する.機械や構造物を安全に設計するためには,降伏条件や複雑な応力状態を把握し,強度評価方法を理解しておく必要がある.材料設計や技術や安全に関連した例題や演習問題に着手し,材料設計の基本的な考え方を学ぶ.機械や構造物を設計をする上で重要となる技術と安全および技術者の倫理についてもふれる.

15.学習成果の確認(試験)

<成績評価方法及び水準>
原則として,技術者倫理課題合格が単位取得の条件とする.
中間(100点満点)および期末試験(100点満点)の点数と演習点数(100点満点)に所定の比率を掛けた数値の合計が60点以上を合格とする。比率は次のとおりである。中間試験:40%,期末試験:45%,演習:15%

<教科書>
“機械工学基礎コース 材料力学” 小久保邦雄、後藤芳樹、森 孝男、立野昌義(丸善株式会社)

<オフィスアワー>
金曜日16:40〜18:00八王子キャンパス8号館-302.それ以外も相談により対応可.

<学生へのメッセージ>
材料力学は機械や構造物の強度設計に必須の学問です.実際の身の回りにある機械や構造物を設計するには材料の応力や変形する性質を良く理解しておく必要があります.与えられた演習以外にも自分で問題を解き、材料力学の考え方をこの機会にぜひ身につけてください.

 

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