2010年度工学院大学 第1部環境化学工学科
○化学技術者の倫理(Ethics for Chemical Engineers)[5D03]
2単位 中村 昌允 非常勤講師
- <授業のねらい及び具体的な達成目標>
- 技術の信頼を揺るがすような事件や不祥事が生じており、技術者の倫理が問われている。
科学技術者は、従来は真理を探究し新しい価値を創造することが使命で、そのことが社会にもたらす影響や結果について一切の責任がないといわれてきたが、第2次世界大戦以降、科学技術者は自らが生み出したものが社会にもたらす影響や結果に対して責任がある。顧客や組織との契約もあるが、最優先すべき行動規範は、「科学技術の危害防止,災害からの防止,公衆の福利に努めること」である。 技術者の行動に模範解答はない。実社会において再び同じ状況が生まれることはなく、それぞれの局面で、「それぞれの行動基準」に従って、自らが最善と考える行動を採るしかない。 本講義では、具体的事例を数多く取り上げ、そこでの技術者の行動を仮想体験(当事者の立場に立ってケーススタデイする)することによって、自分がどう判断し、行動するかを考え、将来の実務の場での「それぞれの行動基準」を構築できるようにする。 日本の製造業の生き残りが問われている。化学産業は新しい物質・反応を生み出すことによって発展してきた。新しい技術への弛まぬ挑戦と技術革新が必要であるが、そこには未知の危険が潜んでいる。技術リスクに対処できる基本的視点と、倫理に沿った行動規範を身につけたい。 目標 1.技術者が社会に及ぼす影響の大きさと社会的責任を自覚し、プロフェッショナルな技術者としての基本的な倫理の考え方を学ぶ。 2.自分で考え、自分で判断できるような技術者になるために、具体的事例を仮想体験し、自らの判断基準を身に付ける。 3.技術者が生きていく上での基本的事項として、説明責任,内部告発,製造物責任,リスクマネジメントなどの考え方を身につける。
- <授業計画及び準備学習>
- ○授業の方法
講義はプロジェクターを用いて行い、PPTのコピーを配布する。 一方的な講義ではなく、適宜に発言を求め、一緒に考える事によって理解を深めたい。 ○授業展開(スケジュール) #1 技術者倫理は何故必要か? #2 化学産業の特徴と発展の歴史 #3 化学物質の安全性(洗剤、食品を事例) #4 事例から学ぶ技術者の行動(ケーススタディ) ケース事例は事前に配布し、各自が予習し講義に臨む #5 プロフェッショナルとしての技術者の行動―1 (チャレンジャー号の爆発と内部告発) #6 プロフェッショナルとしての技術者の行動―2 (原子力発電と説明責任) #7 プロフェッショナルとしての技術者の行動―3 (集団食中毒事件とリスクマネジメント) #8 プロフェッショナルとしての技術者の行動―4 (JCO臨界事故と変更管理) #9 プロフェッショナルとしての技術者の行動―5 (JR脱線事故とリスクアセスメント) #10 プロフェッショナルとしての技術者の行動―6 (製品事故と製造物責任) #11 プロフェッショナルとしての技術者の行動―7 (企業不祥事と技術者の行動) #12 プロフェッショナルとしての技術者の行動―8 (技術者のジレンマ) #13 環境倫理と循環型社会 #14 化学物質管理と国際動向 #15 期待される技術者
- <成績評価方法及び水準>
- 1.全講義の7割以上の出席者の成績を評価する。
2.成績評価は、毎回の小レポート(4割)と期末レポート(6割)
- <教科書>
- 中村昌允 「事故から学ぶ技術者倫理」 工業調査会
- <参考書>
- 社団法人日本技術士会 「科学技術者の倫理ーその考え方と事例ー」(丸善)
米国NSPE倫理審査委員会編 「科学技術者倫理の事例と考察」(丸善)
- <オフィスアワー>
- 授業終了後、質問時間をとる。
連絡先:東京農工大学 大学院技術経営研究科 中村昌允
- <学生へのメッセージ>
- 技術者の行動に模範解答はない。
技術者が直面した具体的事例をもとに、一人一人が技術者としてどう考え、どう取り組むかを仮想体験できるように努める。
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