2010年度工学院大学 第1部応用化学科
医薬品開発(Development of Medicine)[3A06]
2単位 溝上 一敏 非常勤講師
- <授業のねらい及び具体的な達成目標>
- 医薬品の開発は領域横断的な総合的プロジェクトである。そこでは、様々な学問領域が総合的に係わり合って医薬品開発を支えている。そのプロセスを概略すると次のようになる。
1.薬理実験による疾患・病態の解明や、これらに関する文献・学会情報の収集 2.標的とする分子の設定 3.標的に作用する活性物質(リード化合物)の探索 4.誘導体合成によるリード化合物の効力の改良と安全性の評価 5.活性物質の最適化と開発候補物質の選定 6.ヒトに対する臨床試験 このような開発現場で起こっていることや考えられていることに触れることにより、医薬品開発の面白さや困難さと、そこに携わる者に何が求められているかを学ぶ。 以下に具体的な達成目標を示す。 1.医薬品の標的を選ぶ際に、考慮するべきことを理解する。 2.創薬研究の段階的な進め方と、各段階で考慮すべきことを学び、リード化合物の概念およびその最適化の過程を理解する。 3.臨床試験と承認申請のアウトラインを理解する。 4.医薬品の品質とその安全性がどのようにして保障されているかについて理解する。
- <授業計画及び準備学習>
- 授業計画:医薬品開発のプロセスと方法論について、以下の順序に従って解説・講義する。
I.医薬品とは 1.現代の疾患と将来予測 2.医薬品研究開発のプロセス 1)医薬品の基本的性格 2)探索研究段階―研究テーマの設定 評価系の設定と基礎研究の重要性
II.探索研究段階(リード化合物を創出する方法) リード化合物の発見と最適化研究、候補化合物の選定 1.スクリーニングから得られた活性物質を基盤とする方法 1)評価系の構築 2)スクリーニングに提供する化合物 3)スクリーニング系(評価系) (1)高速スクリーニング(High―Throughput Screening:HTS) (2)in Silico Screening (3)化合物ライブラリ(設計と構築) 4)ヒット化合物の選抜と化学変換 5)構造活性相関とファーマコア 6)生体での評価(病態モデルへの投与) 2.生物活性物質の構造を基盤とする方法 3.既存薬の化学構造を基盤とする方法 4.候補化合物の選定と最適化研究 5.前臨床の薬理・薬効試験 6.薬物動態と製剤設計
III.臨床研究段階(精査研究) 1.第I相臨床試験 2.第II相臨床試験 3.第III相臨床試験 4.ブリッジング試験
IV.審査段階 1.流通・使用段階―市販後調査 2.副作用報告制度 3.再審査制度 4.再評価制度 V.医薬品の特許と知的財産
新聞などの報道を通して、医療現場で実際に起こっていることやどのような医薬品が求められているかという情報を把握する。
- <成績評価方法及び水準>
- 授業の最終回に筆記試験を実施する。講義で述べる、医薬品開発に重要なことを中心に出題する。講義をまともに聞いていれば、合格点はとれるはずである。合格点を60点以上とし、出席も考慮する。
- <教科書>
- なし。
- <参考書>
- 長野哲雄ら編著「創薬化学」(東京化学同人、2004年)、北泰行編著「創薬化学―有機合成からのアプローチ」(東京化学同人、2004年)
(特に購入の必要なし。)
- <オフィスアワー>
- 授業終了後15分程度講義室前で行う。
- <学生へのメッセージ>
- 重要と思われることは必ずノートをとること。プリントを要求したり期待する学生諸君が多いが、自分で工夫してノートをとることにより、論理性が培われ脳も活性化される。これは、どの講義についても共通している。
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