2009年度工学院大学 第1部建築都市デザイン学科
建築法規(Architectural Regulation)[4D72]
2単位 高橋 昭彦 非常勤講師
- <授業のねらい及び具体的な達成目標>
皆さんが関わる、「建築する」 という行為は、社会環境に大きな影響を長期間にわたって与えます。 そして、その行為には、様々な法令や規範も含め、大変多くのルールがあります。 ルールをきちんと守り、実践するためには、そのルールの意味を理解することが大切です。 そこで本授業のねらいとして、建築関連法規について単に文理解釈するだけではなく、「何故、そのような法令や規制があるのか。」 「建築という行為と、どのように係っているのか。」 さらに、「時代の背景や技術の進歩によって、どのように変化していったのか。」 といった点にまで理解を深めてもらえるよう講義を進めます。 また、主な達成目標としては、条文をバラバラに理解するのではなく、建築関連法規の全体像を体系的に捉えることと、建築という(本授業では主に設計)行為のプロセスに応じた法令・規制について、実例を取り上げながら、初歩的な実務をイメージできるレベルにまで身に付けてもらいたい。 実務に役立つ授業を、心がけたいと思います。
- <授業計画及び準備学習>
第1週:授業のガイダンス 授業の進め方・建築法規を学ぶ意味 建築の完成までの流れと法規の関係
第2週:法令の基本中の基本を学ぶ! 法の分類・建築基準法の体系・建物は勝手に作れない 確認申請とは?・設計図の目的は? 規定の種別と区分 ・法令集の目次で全体をとらえる ・建築物を建てるための原則 ― 1 : 用語の定義・道路の定義・都市計画区域
第3週:集団規定を理解する! (+ 小テスト) 都市について・建築物と道路の関係・道路の幅員による建築制限 都市計画法と建築基準法→地域、地区制・都市計画図を見てみよう 集団規定で規制する内容→用途制限、形態規制等
第4週:建築プロセス1 ・調査・分析 : ( 調査の種類と目的を掴もう!) 調査により、「どのような法規制が関係するのか?」を把握する ・建築物を建てるための原則 ― 2 : 用途地域と建築物の用途制限 ・建築物を建てるための原則 ― 3 : 規模、形態の制限・建築基準法で用いる面積の種類
第5週:建築プロセス2 ・企画設計 : 建蔽率、容積率の制限 企画設計とは?:コンセプトメイキング+ボリューム算定、計画案は1つではない 形態規制を理解しなければ、どんな設計も不可能 第6週:建築プロセス3 ・企画設計 : 高さの制限 形態デザインに影響を与える規制 高さの限度と建築物の各部分の高さ制限 高さに参入するもの、しないもの・階数と階
第7週:建築プロセス3 ・企画設計 : 高さの制限 (+ 小テスト) 高さ制限の種類と内容 1) 道路斜線制限 2) 隣地斜線制限 3) 北側斜線制限 日影による中高層建築物の高さとボリュームの制限 ・建築物を建てるための原則 ― 4 : 形態制限 ・建築物を建てるための原則 ― 5 : 構造の制限 第8週:建築プロセス4 ・基本設計 : 基本設計とは? 基本設計:計画の主旨と規模や骨格(内容)を決定していく 2つの構造→工法的構造と、耐火・防火性能上の構造 法的視点からの設計フロー:平面計画、断面計画、使用材料における法規制チェック
第9週:建築プロセス5 ・基本設計 ステップ1 : 「シェル(殻)の設計」と防火規定 ステップ2 : 「居室配置と動線計画」と避難規定
第10週:建築プロセス6 ・基本設計 (+ 小テスト) ステップ3 : 「区画割(間仕切等)」と採光・排煙 ステップ4 : 「防火区画」と面積・吹抜け
第11週:建築プロセス7 ・実施設計 : 実施設計とは? 実施設計 : 具体的な仕様、寸法を決定していく 部材の選定・特殊建築物の内装制限・耐火性能など構造の基準 排煙設備の設置義務と構造・その他意匠と係わる規制
第12週:建築プロセス8 ・実施設計 構造強度関係規定 :構造設計と安全 設備関係規定 1)換気設備 2)排煙設備 3)昇降機 電気関係規定 1)非常用照明 2) 避雷設備 消防法(消防設備): 消防法による防災・消火・避難設備
第13週:建築プロセス9 ・各種申請 建築士法 : 建築士(資格)の種類(1級・2級・木造)によって、設計の出来る建物が決まる! 建築プロセス10 ・発注と受注 1)建設業法 2)発注方式 建築プロセス11 ・建設工事 1) 工事現場の安全と衛生 建築プロセス12 ・工事監理業務・各種検査 : 近年、重要度が増している! 建築プロセス13 ・完成・使用開始 建築プロセス14 ・維持・管理・定期報告・住宅性能保証制度等
第14週:建築実務と建築倫理 フリートーキング 最後に、定期試験の内容等の説明
第15週:学習成果の確認(定期試験)
- <成績評価方法及び水準>
原則として定期試験による評価とする。60点以上の者に単位を認める。 ただし、試験の点数が50点以上60点未満の者でも3回の小テストを受けた者は、レポート提出を認め、レポート内容が単位認定相当と判断される場合には最終成績を60点とする。 また、不定期に実施する出席確認において、全て欠席の者の成績評価は「A」を上限とする。
- <教科書>
建築関係法令集「平成21年度版」井上書院他、基本建築基準法関係法令集であれば可 その他、オリジナル資料を授業の度に配布する。
- <参考書>
建築法規用教材(日本建築学会) / 建築倫理用教材(日本建築学会) 建築申請メモ2009(新日本法規出版)
- <オフィスアワー>
授業終了後適宜。
- <学生へのメッセージ>
いよいよ学生生活もあと一年となりましたね。 皆さんが社会に出て、まず最初に驚かれるのが、「実務を進める上で、なんと多くの法規制があることだろう!」 という点です。 でも、社会にはルールが必要です。 そして、そのルールを、いち早く理解しているか否かによって、社会人としてのスタートラインがまったく違います。 複雑な建築関連法規ですが、出来るだけ平易に楽しく進めたいと思います。 一緒に学びましょう!
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