2009年度工学院大学 第1部電気システム工学科

電気システムデザイン(Electrical System Design)[3B74]

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2単位
曽根  悟 非常勤講師

最終更新日 : 2011/02/16

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
 世の中には実に多くのシステムがあるが,その中で電気システムは比較的大きなものでもその特性が良く解明されているし,設計もしやすい代表例である。電気工学を学んだ人が,未知の分野に対する適応力が強いのは,もともと五感では捉えることのできない電気的諸量を実験などを通じて体得したことと,電気に関する事例を通じてシステム工学的センスが養成されているためと思われる。この講義では,講義とそれに付随する4課題の演習を通じてシステム工学を疑似体験するとともに,教室での講義では比較的行いにくいとされるデザイン(設計)の問題に積極的に取り組んでゆく。これまでの講義や試験問題とは違って,正解がただ一つある問題ではなく,無数にある問題[現実の社会にはこの例が多い]に取り組む姿勢も学ぶことになる。具体的には下に示す4例の演習課題を提示して,それぞれの目的意識に応じた柔軟な取り組みという疑似体験を通じてデザイン(設計)に対する手法を身につけることになる。

<授業計画及び準備学習>
1.序論
 a. 電気システムとは  電気工学者が扱う大システム 電力・交通・通信
 b. この講義の性格
   1. 学術的なアプローチ
   2. ケーススタディを通じてのセンスの養成
   3. 両者の程良いバランス
  のなかで,敢えて2.を採ることをその理由とともに示す
 c. この講義の目的  電気工学者としての誇りと自信を持ってもらう

2.デザインとは
 日本語としての「デザイン」と設計  評価と最適化
 とかく解析に偏りがちな大学の講義の中で,設計(合成)の重要さを認識してもらう

3.制御との関連
 設計と制御  一度作ると不変の部分と,状況に応じて変えられる部分
 最適設計と最適制御  オフラインの最適化とオンラインの最適化
 設計と制御との中間(両方)の部分  大きなシステムにはこれが多い
 多くのシステムデザインが何らかの意味で制御と絡んでいることを認識してもらう

4.交通システムのデザイン (その1) 電気車の設計 (その1) 走行性能の設計
   列車の走行性能とは 速度−引張力特性 モータ特性と電力変換器の特性
    歯車比 性能に対する制約条件 最急勾配 電車線電圧(最低〜最高)
    荷重(文字通りの荷重とT車数割合) 粘着性能
   基本的な設計 走行抵抗 加速力 質量 必要なパワーの算定 MT比などの概算
   演習用の設計課題を示しての具体的な補足説明
5.同上 演習用の設計課題を示しての具体的な補足説明
6.同上演習と宿題
 4〜6を併せて一つの課題をこなした達成感を持ってもらう

7.交通システムのデザイン (その2) 饋電システムの設計
   直流饋電システムの構成とその問題点 電車線電圧の算出 回生電力の流れ
   回生失効とその対策 『無対策』という対策 回生絞り込み制御
    回生インバータを変電所に設置 回生/発電両用ブレーキ その他の対策 
   『無対策』に関する改善設計課題の提示 
8.同上演習
 7と8を併せて一つの課題をこなした達成感を持ってもらう

9.交通システムのデザイン (その3) 電気車の設計 (その2) 編成自由度の確保・向上
   編成の自由度とは 動力分散車両の利点を活かすために
   事例研究 東海道山陽新幹線N700系と東北新幹線E2, E3, E4, (E5)系
   もっと多様な質的需要に対処するには
   演習課題の提示 N700系を例に編成自由度の増加策
10.同上演習
 9と10を併せて一つの課題をこなした達成感を持ってもらう

11.交通システムのデザイン (その4) 列車ダイヤの作成とその評価
   列車ダイヤの現状と問題点 基本的評価 評価ツール『すうじっく』
   基本ダイヤと運転整理
12.同上 演習用の通勤ラッシュダイヤの改善課題の提示とその基本 補足説明
13.同上演習
 11〜13を併せて一つの課題をこなした達成感を持ってもらう

14.最終レポートの作成・提出 (早めに提出することが望ましい)

<成績評価方法及び水準>
 演習(宿題を含む)の4課題に対するメモ(最初の3回分)とレポート(最後の1回分)とで評価を行い試験は行わない。目的意識を持ってデザインの課題に取り組み達成感を得ることが重要なので,プロの目で見た出来映えの良さや記述の丁寧さ,正確さにはあまり重点は置かず,自分自身の考え方を反映することを重視する。また,卒業研究で忙しい時期でもあるから,宿題への期待は低めに設定し,通常の講義に対する予習・復習に要する時間で演習が完了する水準にしている。

<教科書>
 不要。 必要なものは全て事前に配布する。

<参考書>
 不要。 必要なものは全て事前に配布する。

<オフィスアワー>
 特に定時には設けない。演習課題に関する質問にはメール(sone@cc.kogakuin.ac.jp)を積極的に活用してほしい。なお,面会希望の場合には事前に予約を取って欲しい。なお,面会希望者はメールで事前にアポイントを取り,面会は28階エクステンションセンター顧問室(2818室)で行う。

<学生へのメッセージ>
 この種の演習を含む講義やセミナーは,熱心な学生からは大変高く評価され,時には受講者のOB会が持たれたり,数年後にまで仲間で話題になることもあるほどであるが,単なる単位稼ぎや漫然と履修しようとする学生はついて行けずに落ちこぼれになりやすい。
 目的に沿って何かを作り上げてゆくというこの講義の性格から,卒論の時期に平行して行うことは,どのような卒論テーマにも有意義なはずでこの講義に時間をとられて結果的に卒論に差障るのではないか,との心配は不要である。意欲的な諸君の積極的な参加を強く希望する。今年度は学外からの単位履修生も参加する予定なので,学生・単位履修生の相互に有益になるように演習を進める予定である。

 

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