2009年度工学院大学 第1部応用化学科

政治と法(Law and Politics)[1107]

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2単位
井上 知樹 非常勤講師

最終更新日 : 2011/02/16

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
 日本国憲法が規定する統治機構条項の学習を通じて、歴史感覚と時代感覚の練磨、個人尊重の価値観の練成、立憲民主主義という統治原理の理解、及び、国政における主権者としての意識・自覚と責任感の彫琢を目指したい。併せて、それらの前提として文章の読解力・表現力の鍛錬を図りたい。

<授業計画及び準備学習>
第1回 ガイダンス・オリエンテーション(大学における勉強とは?)
第2回 憲法史(市民革命史・近現代史)
第3回   続き
第4回 明治憲法から日本国憲法へ
第5回 象徴天皇制
第6回 権力の民主化と権力の分立
     自分「たち」のことは自分「たち」で決める
     自分のことを自分「たち」で決めてはいけない
第7回 権力の民主化:自分たちのことは自分たちで決める
第8回 国民主権・選挙権・政党
第9回 国会・国会議員・議院
第10回 内閣・議院内閣制・財政
第11回 権力の分立:自分のことは他人に決めさせない
第12回 裁判所・違憲審査権
第13回 地方自治
第14回 野党・市民的公共圏
第15回 まとめ・総括

<成績評価方法及び水準>
 授業への出席を単位認定のための前提とし、期末に実施される筆記試験を基準にして期中に数回課される小論文を加味し、以上を総合的に勘案して60点以上の者に単位を認める。委細については期首の授業時に説明するので、必ず出席すること。

<教科書>
 特に指定することはせず、期中に数回課されるレポート時に参考文献を配布する。

<オフィスアワー>
 授業の開始前又は終了後に、講師控室にて。

<学生へのメッセージ>
 21世紀に入ってからの日本の政治は、革命的とも言える圧倒的な国民的支持を得た小泉内閣の下で運営されてきましたが、その後の安倍・福田・麻生内閣は、いい年をして定職にも就かず親の巨万の遺産を食い潰す放蕩息子のように、自らの理想とする国家を作るために自らの力で選挙を戦い国民の支持を調達する努力を、怠っています。その結果が、成立直後の支持率の高さにも拘らず、次第に漸減的低下傾向に入って遂には危険水域にまで下落し、政権を放り出す有様です。自助努力をせず無責任なボンボン育ちの放蕩息子そのものです。こうした現象は、日本の政治システムが、戦後日本国憲法が制定されて60年余り経過して一つの転換点を迎えた、ということを表わしているのかもしれません。
 そこで本講義では、日本国憲法の規定する統治制度の学習を通じて、政治というものを愚直なまでに考えて、今後の将来展望へと繋げていきたいと考えています。というのも、その「将来」の中心的な担い手は諸君らだからです。
 政治の勉強といえば民主主義という言葉が容易に想起されるでしょう。そして民主主義といえば、我々が小学校の児童会や学級会以来馴染んできた多数決という原則が、脳裏に浮かぶのではないでしょうか。しかし、諸君は小・中学生ですか。大学生ならば、そういった初等中等教育レベルに留まっていてもらっては困ります。政治、即ち、国家統治の原理原則は、民主主義だけではありません。立憲主義というもう一つの原理があります。
 従って本講義では、民主主義は重要性と共に危険性を併せ持つという両義性を前提に、民主主義というアクセルと立憲主義というブレーキということを理解してもらうことを企図しています。工学系の学生諸君にとっては、フェール・セーフということは当然でしょう。ならば、国政においても民主政治というアクセルだけでは極めて危険であり、万が一それが暴走し始めたら、民主主義を止めるブレーキング・システムが必要なことは、当然理解頂けるのではないでしょうか。
 本講義が、学生諸君にとって、言葉としては人口に膾炙し陳腐化している「民主主義」について考え直す奇貨となれば、講義担当者の意図は達成されたと言えるでしょう。

 

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