2008年度工学院大学 グローバルエンジニアリング学部機械創造工学科

世界の歴史認識(Various Recognitions of History in the World)[4523]

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2単位
塚本 剛 非常勤講師

最終更新日 : 2009/11/04

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
 現代における世界認識の差異は詰まるところ、文化的背景の相違にある。歴史という文化をもつかもたないかによっても、世界の認識は大きく異なる。歴史をもつ文明は、その認識において時間的経緯をもって説明しようとするが、もたない文明はそうはいかない。また歴史も自分たちの住む世界を時空間にそって言語で表現する以上、個別的性格が強く、その普遍性は弱い。世界のあらゆる文明を普遍的に説明しうる歴史観は存在しない。そしてそれぞれの文明が、様々な歴史的事象について、固有の歴史観に立脚した固有の解釈を行い、正統性を訴える。このような現状において相互理解は、相手の文明のもつ歴史観を理解してこそ、その糸口がつかめると考えられる。そしてその可能性がいかほどにあるのか受講生とともに考えていきたい。
(JABEE学習・教育目標)
「国際工学プログラム」:(E)コミュニケーション能力と国際感覚の習得:◎ (A)多面的な視点から考え
る能力:○
JABEE基準1の(1)の知識・能力:(a):◎(f):○
(前提となる基礎知識と習得後の展開)
 本科目を履修する前に、高校世界史の最低限の基礎知識を習得しておくことが望ましい。
 本科目で習得した内容は、「国際化と異文化理解」、「国際関係と文化」、「国際企業論」などの科目の履修に役立つ。

<授業計画>
第1週 [ガイダンス]そもそも「歴史」をもつ文明ともたない文明があること、また歴史認識の違いが各地域の文化の違いから生じ、なかでも宗教観から由来するものが大きいことを検討する。
第2週 [東アジアの歴史認識1]中国の歴史認識について、その歴史書=「正史」の編纂について検討し、中国人にとっての正統観を探る。
第3週 [東アジアの歴史認識2]中国の歴史認識はその特異な正統観による王朝支配によって構造的に支えられてきたものであり、王権と歴史認識との関係を検討する。
第4週 [南アジア・東南アジアの歴史認識]「歴史がない」といわれる両地域の独特な世界観について、宗教観に注目しつつその形成過程を学ぶ。
第5週 [中央アジアの歴史認識]実は世界史の展開が東西交易路を掌握した中央アジアの騎馬遊牧民によって形成されてきたことを明らかにして、そのダイナミズムを検討する。
第6週 [西アジアの歴史認識]世界で初めて「世界」を意識し「世界」の歴史を叙述したのは、イスラームであり、西アジア発祥のイスラム教が持つ強烈な「社会意識」について学ぶ。
第7週 [西ヨーロッパの歴史認識1]今日の「グローバルスタンダード」を生んだ西ヨーロッパの歴史認識について、ユダヤ教、キリスト教が与えた影響とその展開についてを学ぶ。
第8週 [西ヨーロッパの歴史認識2]「自由」「平等」という価値認識を生み出したヨーロッパ近代史の裏側に、根深い差別意識に支えられた「社会進化論」が存在していたことを学ぶ。
第9週 [東ヨーロッパの歴史認識] ギリシア、ローマで培われた歴史観が一直線に西ヨーロッパに繋がったのではなく、ビザンツ帝国で涵養されていたことを検討する。
第10週 [ロシアの歴史認識]アジアの一部とみなされてきたロシアがいかに西欧文明を受容し、ついに西欧へのコンプレックスを脱却して独自の歴史認識を持つに至ったかを学ぶ。また、近代以降そのロシア(ソ連)の圧力を受け続けた東ヨーロッパの苦悩について学ぶ。
第11週 [アメリカの歴史認識]西ヨーロッパ文明を継承し、「グローバルスタンダード」へと発展させたアメリカの持つ先進性と保守性について学ぶ。特にアメリカがキリスト教でもヨーロッパでは非伝統勢力であるプロテスタントを中心に結成された国家であることに留意し、その特異な正統観ゆえにしばしば持ち出される「正義」の本質に迫りたい。
第12週 [世界の歴史認識と現代の諸問題]本講義の総まとめをする。
第13週 教室において試験を実施する。

<成績評価方法及び水準>
 試験の結果によって評価する。世界各地の歴史認識の特徴を理解できているか、課題に関して自己の見解を明確かつ論理的に述べているかどうかを評価基準とし、60点以上の者に単位を与える。欠席が目立つ者、私語など講義を妨げる行為が目にあまる者には試験の答案内容いかんに関わらず評価を与えないので注意されたい。また昨年のレポートで実際にあったことではあるが、他人の論文等の著作物の無断引用、剽窃、盗作については厳正な態度で臨む。これらは漏れなく著作権法違反の違法行為であり、かかる知的財産権の侵害については許されないものであると認識されたい。
「国際工学プログラム」の学習・教育目標(A) (B)および(E)は、本科目およびこの目標に対応する卒業に必要な他の該当科目をすべて習得することにより達成される。

<教科書>
使用しない。

<参考書>
毎回の講義で参考資料をプリントして配布する。

<オフィスアワー>
授業終了後教室で。 または 授業開始前・終了後、兼任講師室で。

<学生へのメッセージ>
高校時代までのともすれば暗記する科目ではなくして、教養人が習得すべきリベラルアーツとしての歴史を提供したく、講義に臨む。よって講義を受講し、自分なりの問題意識をもってそれを論理的に思考することを求めたい。意欲ある学生の受講を望む。

 

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