2008年度工学院大学 第1部電子工学科

科学と宗教(Science and Religion)[4A07]

試験情報を見る] [授業を振り返ってのコメント(学内限定)

2単位
田口 博子 非常勤講師

最終更新日 : 2009/11/04

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
 「死」について公に語ることは、近代、とりわけ第二次世界大戦後の日本においてタブーとされてきました。その中で例外的に「死」と深いかかわりを維持してきた領域が、医学と宗教、そして文学です。
生命科学の長足の進歩は、生命と死についてさまざまな知見をもたらしました。しかし、その急激な変化に個人は戸惑うばかりで、対応できないというのが真相でしょう。また、最近の風潮に対して、「生命と同じように、死はあまりにも軽んじられているのではないか?」という危惧の念を抱く人も少なくないように感じられます。このような状況からの突破口を求めて、生命とのかかわりにおいて、近年「死」について活発に議論されるようになってきたように思われます。
 昨年度と同様、諸宗教における霊魂観・他界観などの「死」への態度を、具体的なテクストを紹介しつつ、概観したいと思います。また、充分に取り扱うことができなかった、近代以降における自然科学、あるいは文学との関連にも目配りしたいと考えています。

<授業計画>
1文化人類学における「死」の研究
 1)他界観・霊魂観・死者儀礼
 2)現代における死
2中国の宗教における霊魂観
 1)孔子における生死への態度
2)道家の霊魂観
3)道教・中国医学における身体・霊魂観
3インドの宗教
1)リグ・ヴェーダ、ウパニシャッドにおける霊魂観・来世観
2)「バガヴァッド・ギーター」における死生観
4原始仏教と仏教の流れ
1)原始仏教における死への態度
2)仏教における輪廻転生と解脱
5日本の場合
1)日本の仏教における来世観
2)民間信仰における他界観
3)神話、神道における霊魂観と他界観
6古代ギリシア
1)ギリシア・ローマ神話と叙事詩における他界、オルフェウス教における霊魂観
2)ギリシア哲学における死への態度
3)自然哲学における霊魂観
7イスラーム
1)「クルアーン」における最後の審判・復活・来世
2)ギリシア哲学の影響とスーフィズム(神秘思想)
8ユダヤ教・原始キリスト教
1)旧約聖書と新約聖書における霊魂・来世観
2)ユダヤ教における「死」
9中世のキリスト教
1)新プラトン主義とグノーシス思想の霊魂観
2)中世神学と神秘思想における霊魂観
3)歴史学から見た、中世における死の意義
10近代における身体観・霊魂観
1)機械論
2)霊魂の存在と道徳の関連
11十九世紀における物活論と生気論の流れ
1)物活論の流れ
2)ドイツ・ロマン派における生気論的思考
12現代
1)精神医学における死の意味
2)自然科学における生命観
3)文学における「死」

<成績評価方法及び水準>
 小レポートを数回(6回程度)提出して頂きます。その上で、授業で扱った事柄に関する考察と意見・感想をまとめたレポート(2000字以上)を学年末に提出して頂く予定です。尚、レポートは必ず「自分の言葉」で書いて下さい。
就職活動や内定先の実習で出席が困難な場合は、予め相談して下さい。

<教科書>
授業の参考資料を配布する予定です。

<参考書>
随時指示します。

<オフィスアワー>
水曜日の第六時限
木曜日の第一時限と第二時限

<学生へのメッセージ>
諸宗教の聖典や各宗教者のテクストを、ごく一部ですが詳しく見てゆきたいと考えています。まだまだ縁遠いことかもしれませんが、死・霊魂・他界について自分なりの考えを形作る一助となれば、と思っています。

 

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