2008年度工学院大学 第1部環境化学工学科

基礎物理化学I(Basic Physical Chemistry I)[2112]

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2単位
酒井 裕司 講師  
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最終更新日 : 2009/11/04

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
化学技術者は、物質の製造、使用、回収、再利用、最終処理までを取り扱う。それらのいずれの過程においても、物質がどのような変化をするか知らなければならない。物質は、温度・圧力によって状態を変化し、この状態が物質の性質を決める。このような状態変化に伴う物質の性質を理解することが物理化学の基礎である。講義の前半では、気体の種類によって挙動が異なるが、定数表などを用いて状態を的確に把握・計算できるようになることを目標とする。 講義後半では、熱力学の基本法則(第1法則)について理解してもらい、物理的変化および化学的変化に伴うエンタルピーの計算方法を習得してもらう。物理化学は分子の諸性質を扱う学問であり、気体の性質を通じて、ミクロとマクロの相関について理解を深めてもらいたい。
授業では、教科書の0章、1章、2章までを講義する。1章で、気体の性質についての講義を行い、2章では、基礎物理化学II、物理化学I、II、およびプロセス熱力学の講義の導入として熱力学第1法則、エンタルピーの解説を行う。

<授業計画>
第1週 単位と次元:SI単位と単位互換
物理化学で必要となる単位の紹介と単位互換の計算方法の練習を行う。

第2週 完全気体:圧力と体積の関係、温度と体積の関係(ボイル・シャルルの法則)
気体の性質の導入として、完全気体(理想気体)の式の紹介・復習を行う。単位互換を交え、理想気体の状態の基礎的な計算方法の練習を行う。

第3週 混合気体:分圧・モル分率
完全気体の混合物における分圧、モル分率について紹介する。第2週に続き、圧力の計算のための基礎的な計算方法の習得を行う。

第4週 実在気体: van der Waals方程式、圧縮因子
分子間相互作用が存在する実在気体を取り上げ、van der Waals方程式の導出、および実在気体の状態の計算方法について学ぶ。また、分子間相互作用に起因する圧縮因子について説明する。

第5週 実在気体:状態図(相図)、臨界点、対応状態原理
物質の状態図(気相、液相、固相)の見方について学ぶ。特に、液体―気体の相境界、臨界点の説明を行い、状態図から物質の状態を読みとってもらう。また、対応状態原理についての紹介も行う。
 
第6週 気体の分子運動モデル
分子間相互作用を無視した単純な分子運動モデルから完全気体の式の導出を行い、気体の状態に関するミクロとマクロの相関について理解してもらう。また、マックスウェル分布を紹介し、温度の概念について理解してもらう。講義後半では、次週の中間テストにむけて前半の講義の内容をまとめ、気体の状態の計算方法に関わる演習を行う。

第7週 中間試験

第8週 熱力学第一法則
中間テストの解説の後、講義後半の中心課題である熱力学第一法則について説明する。

第9週 仕事と熱
気体の膨張による仕事(一定の圧力に逆らう膨張、等温可逆膨張、自由膨張)について解説する。

第10週 熱のやりとり
気体の膨張による仕事の計算練習を行う。また、熱容量(定容・定圧熱容量)を紹介し、気体の温度変化に伴うエネルギーのやりとりについて解説する。さらに、分子の自由度から熱容量をもとめ、熱容量が分子の構造と密接に関係することを理解してもらう。

第11週 エンタルピー
気体の膨張による仕事を通じ、エンタルピーの概念を理解してもらい、その計算方法を習得する。

第12週 熱化学:化学反応におけるエネルギーの保存
化学反応におけるエンタルピー変化の概念を理解してもらい、先週に引き続き、物理的・化学的変化に伴うエンタルピー変化の計算練習を行う。

第13週 気体の膨張による仕事とエンタルピーのまとめ
期末試験にむけ、講義後半で解説した熱力学のまとめをおこない、演習問題の解説を行う。

第14週 期末試験

<成績評価方法及び水準>
成績評価は定期試験の結果で評価する。中間テスト(40%)と期末テスト(60%)の比重で配点する。成績はS(100〜90点)、A(89〜80点)、B(79〜70点)、C(69〜60点)、F(59〜0点)で評価し、S,A,B,Cを合格とする。

<教科書>
「アトキンス 物理化学(上)第6版」 東京化学同人 P.W.Atkins著 千原秀昭、中村亘男訳

<オフィスアワー>
木曜日、金曜日 16:00〜19:00八王子キャンパス5号館205

<学生へのメッセージ>
最初の部分は高等学校までに習得した内容の復習であるが、それを基礎として実社会に役立つ内容へと発展していく。授業中に理解出来なかった部分は、分かるまで復習する習慣をつけるように。

 

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