2008年度工学院大学 第1部応用化学科

界面活性物質(Surface-active Agent)[1D02]

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2単位
今野 紀二郎 非常勤講師

最終更新日 : 2009/11/04

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
授業のねらい:界面活性物質の中でも工業的及び日常生活において広く使用されている界面活性剤の基礎的溶液物性と作用機構について理解して頂く。具体的な達成目標:界面活性剤は,気体-液体等の種々の界面で機能するため,先ず,界面張力の概念と定義,表面張力が関わる諸現象について理解して頂く。界面活性剤の2大物性ある界面への吸着と溶液物性について理論的あるいは界面活性剤の分子構造の違いから理解して頂く。さらに,それらの基礎的知識に基づいて,界面活性剤による可溶化,乳化,分散,洗浄,浮遊選鉱,殺菌等の作用機構について理解して頂く。また,過去に発生した界面活性剤の水圏への環境問題を,どのように技術的に解決したかについても理解して頂く。

<授業計画>
第1回 界面活性物質の定義を行った後,それを分類する。それらの中で,特に工業的に多量に合成・市販され,    応用されている界面活性剤を取上げ,その分類と用途について解説する。
第2回 界面活性剤がどのような分野で使用されているかを具体例を挙げながら話した後,それを使用するには,    どのような知識が必要かなどについての概論する。
第3回 界面活性剤は気体−液体,液体−液体などの界面に吸着し,作用するので,先ず,何故,液体は表面張力    を示すかを気体-液体表面を例に挙げて概説する。その後,表面張力の熱力学的定義と他の物性値との関    連性について話す。界面張力についても話す。表面張力の測定法については宿題とする。
第4回 表面表力が関わる微粒子の溶解度,蒸気圧,ラプラス圧について話す。その後,それらへの界面活性剤の    影響,さらには表面張力と界面張力との関係(Fowkesの式)について解説する。
第5回 いよいよ,講義は界面活性剤を水に溶かして実際に使用する時の話すに移る。それには,先ず界面活性剤    が気体-水表面およびバルク水中で,どんな状態で存在するか?について,界面活性剤の2大物性につい    て概説し,それぞれについて十分時間をかけて詳細に平易に話す。その1つは,界面における界面活性剤    の吸着について界面活性剤濃度による表面張力の低下の原因と吸着状態から解説する。さらに,表面活     性の意義,界面活性剤の表面吸着量(ギブスの吸着式)について話す。
第6回 もう1つの物性は界面活性剤溶液である。この溶液については状態図から概説する。その後,界面活性剤    の溶解現象(クラフト点,曇り点)をその分子構造の違いから解説する。その溶解現象の実用面における    重要性についても話す。
第6回 溶液の重要な物性として,臨界ミセル濃度(cmc)の物性値の重要性と測定法について解説する。その後,    何故,界面活性剤は分子集合体,つまりミセルを形成するか?をその理論を十分時間をかけて平易に解説    する。
第7回 ミセル形成理論から界面活性剤の分子構造,温度,電解質添加等の外部因子によるcmcの大きさを推定す    る。ミセルサイズとミセルの動的平衡,さらには水中ではない油中におけるミセル(逆ミセル)について    も触れる。
第8回 可溶化作用については,その重要性と応用分野を実例を挙げて話す。その後,可能化の定義,測定法,用    語,評価について概説し,被可溶化物質の可溶化位置,マイクロエマルションなどのついて解説する。
第9回 乳化作用については,油滴の水中へあるいは水滴の油中への分散性,つまりエマルションについての重     要性と応用を実例を挙げて話す。エマルションの分類をした後,特にO/Wエマルションの安定化,エマ     ルションの作成につて解説する。
第10回 分散作用については,固体微粒子の水中への分散安定性,すなわちサスペンションの重要性と応用分野     について実例を挙げて話す。その後,その分散安定化を界面活性剤の微粒子表面における吸着状態,粒     子間の静電的反発力と引力から説明する。
第11回 洗浄作用は,第8回〜第10回の可溶化,乳化及び分散作用が複合化した複雑な系であるので,その概念    を話した後,洗浄を熱力学的に解説する。
第12回 浮遊選鉱の原理を話す。その原理が古紙とインクの分別へ応用できることを熱力学的に解説する。
第13回 過去に発生した界面活性剤による水圏の環境問題を技術的にどのように解決したかについて解説する。
        

<成績評価方法及び水準>
試験による。時々行う出欠と理解度を確かめるための質問をする。それらも一部評価の対象とする。

<教科書>
教科書となる本がないので,自作の冊子を配布する。

<参考書>
界面活性剤に関する書籍は多数市販されている。特に,指示しないが,自分に合った書籍を探すのも勉強と考える。専門書でない書籍を望みます。

<オフィスアワー>
講義終了後。

<学生へのメッセージ>
先ずは,講義に出席すること。卒業後,どんな分野に進んでも界面活性剤を使用すると機会があると思うので,基本的なことはしっかり学んでほしい。

 

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