2006年度工学院大学 第1部情報通信工学科

作家とその世界(Works of Literary Giants)[1417]

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2単位
永野 宏志 非常勤講師

最終更新日 : 2006/05/30

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
後期のテーマ:<非>学のために――文学はどのように<非>を肯定できるか?
フレキシブルであれと社会は要求する。この見てくれのよさそうな言葉が、誰に対してフレキシブルであれと命じているかを考えれば、そのいかがわしさがよくわかるはずだ。上から命じられるこの隷従的な柔軟性は、この私のための柔軟性ではまったくない。
このような従属的な地位と硬直した一方通行に、別の生き方を対置し、真の柔軟性を獲得していくことはできないか――これが、この講義のテーマである。「非」とは二つの羽が背き合うところから「〜にあらず」という否定語として扱われている。が、この目に見える世界とは別のあり方で、我々の経験を支える「未」のポテンシャルを学ぶ観点からすれば、「非」は別の道、別の方法を示しているのである。
この意味で今度は、文学・芸術が別の道を示す表現となり得るかが問われることになる。「未」において否定語の排外的な暴力性を弱める力を見出せるならば、次の段階では、「未」が「非」を肯定的な別の方法、別の道へと作り直す必要がある。でなければ、「未」はある結果の前段階、不十分なプロセス、大人になるまで一時期駄々をこねる未成年の身分に留まるだけだ。そんな未成年が大人になれば、自分の過去を直線の時間上に配置して未成年時代を懐かしみ、迫り来る老年と死をなす術もなく思い続けるしか術がないだろう。
ならば、未だ死なない(あるいは生きてない)この私が、死なないためにはどうすべきなのか――全面的にそう問うことが、この私が生きる別の方法、別の道へのスタート地点となるだろう。この途方もない問いに迫って行った人々を群像的に紹介し、彼らが抱えた問題から、死なないための<非>学への道を模索して行きたく思う。
それゆえ、前期と同様、講義の進行も常に「未」であり続けるよう、各サンプルは仮設として、そのつど変えていく余地を残しながら進む予定=未定である。以下に列挙するものはとりあえずのサンプルだが、個々に他と繋がり混ざり合ってもいる。この中から時宜に応じて順不同で抽出したいくつかの話題を、サンプルごと2回をひとつの区切りとして紹介する。が、時間の関係上すべてを扱えず、以下のもの以外に変更する可能性も大いにありうることを承知願いたい。

<授業計画>
(前・後期共通のサンプルだが、どちらも中心とする問いは同じであり、順不同にピックアップしながら進む予定=未定なので半期受講でも差支えない。)
☆進化の果て・・・夢野久作とアーサー・C・クラークにおける悪循環
☆動物の群れ・・・夏目漱石『吾輩は猫である』とミッキーマウスの漏出する欲望
☆断片・周縁化・・・寺山修司とウィリアム・バロウズの反抗/抵抗
☆迷宮・・・安部公房『砂の女』とアラン・レネのヒロシマ以後の終わりの始まり
☆コピーとシミュラークル・・・江戸川乱歩における探偵小説と幻想小説の双子性
☆不死・・・アラカワ+ギンズとヘレン・ケラー『奇跡の人』の視聴覚なしのエコシステム
☆色彩と感覚・・・正岡子規とジェイムズ・タレルのカラフル・スローライフ
☆襞としての生・・・三宅一生、山本耀司、ヴィム・ヴェンダーズのコンテクストとしての日常
☆機械圏/生命圏・・・大岡昇平とロードムービーの環境-自己のカップリング
☆トランスする物語構造・・・小泉八雲とSFファンタジーの変換を繰り返す規則
☆マイナー文学と越境・・・宮沢賢治とフランツ・カフカのバイオ・ポリティックス
☆過去の保存法・・・三遊亭円朝と『もののけ姫』の民俗的想像力
☆転ぶピエロたち・・・尾崎放哉とロシア・アヴァンギャルドの笑いと革命
☆余白のざわめき・・・柳田國男とグレゴリー・ベイトソンのエコロジカル・ステップス 
☆感染と分身・・・日本ホラームービーと二人のデヴィッド(リンチ、クローネンバーグ)

<成績評価方法及び水準>
そのつどのインプロビゼーションを通して、学生も教員も自ら未来に触手を伸ばして行く時間としたいので、過去の知識の理解よりも未来へと重点を置く。そのため、講義後半15分を小説や詩の創作やテーマとなる概念を検討するよう、未知へとさまようようなやや無理難題を含んだ100〜200字程度の課題を毎回課す。課題の優秀者は次回の講義に氏名を公表し、5〜10点の加点をする。
課題を毎回提出し、各回の出席と平常点とする。課題提出の少ない者、書けなかった者、書く分量の少なかった者は欠席扱いとするので、解けない問いでも書く努力を大いに要する。さらに、学期末には創作的な試験を実施して総合的に評価する。両者(毎回の課題提出と期末試験)を合計して60点以上の者に単位を認める。講義を欠席した場合は1回につき5点の減点が目安となる。

<教科書>
基本的には、上にリストアップした著者名の文献を扱う予定だが、講義の性格上プリントやビデオ等でそのつど部分的に提示する。

<参考書>
ミハイル・バフチン『小説の言葉』(平凡社ライブラリー)、ケネス・バーク『動機の文法』(晶文社)、ジョルジュ・ミノワ『未来の歴史』(筑摩書房)、ハラルト・ヴァインリッヒ『忘却の文学史』(白水社)、ニクラス・ルーマン『近代の観察』(法政大学出版局)、グレゴリー・ベイトソン『精神の生態学』(新思索社)、荒川修作+マドリン・ギンズ『建築する身体』(春秋社)、河本英夫『オートポイエーシス2001』(新曜社)、辻信一『スロー・イズ・ビューティフル』(平凡社ライブラリー)、カトリーヌ・マラブー『ヘーゲルの未来』(未来社)、平井玄『ミッキーマウスのプロレタリア宣言』(太田出版)、江川隆男『死の哲学』(河出書房新社)

<オフィスアワー>
八王子校舎で、授業終了後10分ほど。

<学生へのメッセージ>
「非」をどこまで別の方法、別の道に作り直せるか。『広辞苑』でも「非」は最低でも以下のサンプルがある。以下どれが別の生き方の概念として作り直せるかを各々考えながら、講義に臨んでもらいたい。
「非愛、非違、非有非空、非運、非営利、非家、非我、非可逆、非核、非学、非楽音、非可算(名詞)、非課税、非勝手、非関税、非器、非毀、非義、非議、非挙、非拠、非興、非形、非業、非金属、非公事、非具象、非蔵人、非経口、非決定論、非現業、非行、非公開、非公式、非合法、非合理主義、非国民、非婚、非言、非才、非細工、非債、非参議、非時、非職、非色、非食、非侍従、非儒、非常、非情、非訟、非思量低、非心、非人道的、非神話化、非勢、・・・(さらにさらに続く)」

以下の関連URLも参考にしてもらいたい。
ARCHITECTURAL BODYhttp://www.architectural-body.com/
ナマケモノ倶楽部http://www.sloth.gr.jp/

 

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