2005年度工学院大学 第1部建築学科 建築学コース

政治と法(Law and Politics)[1217]

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2単位
井上 知樹 非常勤講師

最終更新日 : 2005/05/25

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
近代立憲主義憲法の来歴、その保障する価値、それを担保する仕組、及び、現代的課題、以上の観点から日本国憲法の統治システムを学習し理解するを通じて、歴史感覚の習得、時代感覚の練磨、個人尊重の価値観の練成、人権感覚の涵養、批判的主体的個人の確立、公共志向的個人の陶冶を図りたい。

<授業計画>
一、ガイダンス・オリエンテーション
二、市民革命史(これまでに辿って来た道のり)
三、天皇主権・君主主権(天皇陛下万歳って何で?)
四、明治憲法から日本国憲法へ(唯一の神聖な天皇への権力集中から
                             天皇の無力化=権力分立・権力民主化)
五、自分のことは自分で決める(人権論・自由論…ごく簡単に)
六、自分「たち」のことは自分「たち」で決める(権力民主化)
     国民主権・選挙権・国会・内閣
七、自分のことを自分「たち」で決めてはいけない(権力分立)
     裁判所・地方自治・対抗権力・市民的公共圏

                         以上をキーワードとして授業を進めていきます。

<成績評価方法及び水準>
授業への出席を単位認定のための前提とし、期末に実施される筆記試験を基準にして期中に数回課されるレポートを加味し、以上を勘案して60点以上の者に単位を認める。期末試験はもちろん期中のレポートについても、文章の読解力、論理構成、表現力を基準とする。委細については期首の授業時に説明するので、必ず出席すること。

<教科書>
特に指定することはせず、期中のレポートや期末の試験に最低限必要な文献をプリントして配布する。

<オフィスアワー>
授業の開始前又は終了後に、講師控室にて。

<学生へのメッセージ>
 昨今の日本の政治は、革命的とも言える圧倒的な国民的支持を得た小泉内閣の下で運営されていますが、その内閣を支えている国会の与党は、野党かと見紛うばかりの抵抗勢力であるだけでなく、相も変わらず汚職体質・癒着体質であり、政治がそのように迷走・浮遊していても、野党それ自体が政権交代の迫力・精力に欠けています。そして、そのような政治家の下で微動だにせず国民生活を支える重心の役割を果たしていた筈の官僚や行政組織までもが、堅固な倫理・信念を喪失して腐敗腐蝕し、政治不信・行政不信の闇に包まれています。かてて加えて、そうした三流の政治に対してバブルの頃一流だと自負していた経済も、バブル崩壊と共に、無能な現場の不祥事が噴出しそれを隠蔽工作してまで自己保身のために責任回避に狂奔する管理職・経営陣等、腫瘍や化膿に冒されています。そうして、体質改善のために充てられるべき90年代を自覚症状のないまま無為に過ごしたため、失われた10年として現在もなお不況に苦しみ、自信喪失に悩んでいます。  かかる危機的状況にあって、世間では、カルロス=ゴーンによる日産のV字回復や石原都知事の国や銀行と闘う姿勢等、政治家にも強いリーダーシップの発揮が期待されています。  しかし、日本が民主主義・国民主権の国であるとは、日本国民が日本の政治の在り方を決定できる主権を持っているという、「民」が「主」人公である政治のことを言うわけです。換言すれば、「民」が「主」体的且つ自「主」的に行動する政治であるはずです。それなのに、我々は誰か強い人を待望し期待するという、消極的で受動的な「待ち」の姿勢です。皆が待ち望んでいる人にお任せするわけだから、それも「民主主義」である、ということなのでしょうか。  本講義が、学生諸君にとって、言葉としては人口に膾炙し陳腐化している「民主主義」について愚直なまでに考える奇貨となれば、講義担当者の意図は達成されたと言えるでしょう。

 

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