2005年度工学院大学 第1部情報工学科
計測基礎(Fundamental Measurements)[6310]
2単位 菊池 恒男 非常勤講師
- <授業のねらい及び具体的な達成目標>
- 「計測」は,日常の“体重測定”から最先端のハイテク技術に至るまで,生活や産業の基礎を支える重要な「道具」です.一方,皆さんが日常経験する「計測」では,「この計測結果は本当に正しいだろうか?」と疑いを持つことはあまりないでしょう.しかし,「信頼できる計測」は,単に「優れた測定装置」だけでは実現できません.日頃皆さんが意識しない「信頼できる計測」を実現する「仕組み」「制度」「評価技術」等が必要です.工学者を志す皆さんには,これらを学んでいただき,「信頼できる計測とは何か」,「信頼できる計測はどうすれば実現できるか」,「今自分がやっている計測はどの程度信頼できるのか」等を日頃から考える習慣を身につけ,電気,機械,化学等の垣根を超えた「計測」の根底にある「基礎」を理解してもらうことがこの授業のねらいです.
以下にこの授業の具体的な目標を示します. 1.計測の根幹を支える国家標準,トレーサビリティ,国際相互認証などについて理解すること. 2.「計測の信頼性」,「評価方法」等について理解を深めること. 3.計測に不可欠なデータ処理,統計処理,不確かさの概念等を理解すること. 4.主要な計測技術の原理について理解すること. 5.計測と一体不可分な,主要なセンシング技術の基礎を理解すること.
- <授業計画>
- 「計測基礎」で解説する主な項目を下記に列挙します.項目相互に関連する項目や,複数回に分けて解説する項目もあるため,番号は必ずしも授業日程そのものを表すものではありません.
1.[ガイダンス]:授業全体の進め方について概略を説明します. 2.[信頼できる計測とは何か]:計測で最も重要な「信頼できる計測とはどのような計測か」,「どのようにして実現されるのか」等について解説します. 3.[国家計量標準のしくみ]:「信頼できる計測」の根幹を支える「国家計量標準」について解説します.具体的には,「計量標準」の歴史的背景,国際的な意義,計量器の校正のしくみ,トレーサビリティ制度,国家間の相互認証,等について解説します. 4.[単位]:計測と切り離すことができないSI単位系の成り立ち,及びその記法の注意点等について解説します. 5.[計測における統計の基礎]: 統計処理の知識は,「信頼できる計測」を実現する上で重要であるだけでなく,次項で述べる「計測の不確かさ」を理解する上でも必要です.授業では,必要最小限の「統計の基礎」について解説します. 6.[計測の不確かさ]:ある計測が「どの程度信頼できるのか」という,いわば「計測の質」を数量的に表現するために使われる「不確かさ」について解説します. 7.[計測におけるディジタル信号処理の基礎]:昨今,計測を行う際に,ディジタル機器の使用が主流になっています.しかし,正しい知識なしにディジタル計測を行うと,思わぬ“落とし穴”にはまります.授業では,計測におけるディジタル信号処理の基礎,ディジタル信号処理で注意すべき問題点,ディジタル計測に起因する「不確かさ」等について解説します. 8.[各種の計測技術]:実用的な計測技術の例をいくつか紹介します. 9.[計測用各種センサ]:センシング技術と計測技術は切り離せない関係にあります.授業では,代表的なセンシング技術について,その原理や応用例を紹介します.
- <成績評価方法及び水準>
- 毎回授業の最後に演習を実施し,その提出をもって出席とします.成績は,期末に実施する“レポート”で評価し,60点以上を合格とします.ただし,“レポート”の得点が50点以上60点未満の場合,以下を満足すれば,合格とする場合もあります.
1.出席が全授業日数の70%以上であること,且つ, 2.演習の解答内容が特に優れていること.
- <参考書>
- 「ISO規格等に基づく 計測の基礎 SI単位と不確かさ」 関 和雄 著(東京電機大学出版)
「計測の信頼性評価 トレーサビリティと不確かさ解析」今井 秀孝 著 (日本規格協会) その他,必要に応じて授業中に紹介します.
- <オフィスアワー>
- 授業開始前,八王子校舎講師控え室で対応可能.それ以外は,メールで対応可能.メールアドレス:tsuneo.kikuchi@aist.go.jp
- <学生へのメッセージ>
- 例えば,皆さんが肉屋で100gの肉を買うとき,よほど特別な事情がない限り,売る側,買う側とも“100g”を表示する秤(はかり)に疑いを持つことはないでしょう.一見当然のようですが,これは単に優れた「秤」だけではなく,「信頼できる計測を実現する仕組み」があって,始めて実現できます.この「仕組み」について理解してもらうことが,この授業の重要な目標の一つです.
講師は,重さや長さ等の“量の大元(おおもと)”を世の中に供給している 研究機関に勤務しており,計測の現場における実例を示しながらわかりやすい授業を目指すとともに,学生の皆さんには,“信頼できる計測の実現”を常に心がける習慣を身につけ,“道具としての計測”を上手に使える工学者になっていただくことを,強く期待しています.
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