2005年度工学院大学 第1部環境化学工学科

化学技術者の倫理(Ethics for Chemical Engineers)[5466]

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2単位
中村 昌允 非常勤講師

最終更新日 : 2005/05/25

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
 日本の製造業の生き残りが問われている。化学産業は新しいモノ、技術を生み出すことによって発展してきた。今後とも技術革新が必要であるが、そこには未知の危険が潜んでいる。
 技術者は、自分が生み出したものがもたらす事態に対して責任があり、科学技術の危害防止,災害からの防止,公衆の福利に努めねばならない。しかし、一連の産業事故,集団食中毒事件,原発事故,医療事故,自動車リコール事件など、技術の信頼を揺るがすような事件や不祥事が生じ、技術者の倫理が問われており、リスクマネジメントも考慮していく必要がある。
 技術者の行動に模範解答はない。本講義では具体的事例を数多く取り上げ、そこでの背景や問題点、再発防止策をケーススタデイすることによって、それぞれの局面で自分ならどう判断するかを考え、将来の実務の場での判断基準が構築できるようにする。
 あわせて、21世紀の技術開発に必要な基礎知識として、大学と産業界との連携を概説し、社会に役立つ技術者を育成する。
1.技術開発の社会に及ぼす影響の大きさと関わりを理解し、技術者が負っている社会的責任を自覚し、プロフェッショナルとして行動できる技術者になるための倫理的考え方の基礎を学ぶ。
2.それぞれの局面でどう考え、どう行動するかを、自分で考え、自分で判断できるようになるために、具体的事例を通して、その対処の仕方を学ぶ。
 [達成目標]
  (1)化学産業の歴史と特徴を知り、今後の生き残りのための課題を説明できる。
  (2)技術者倫理が必要とされる背景と重要性を理解し、説明できる。
  (3)化学物質の安全管理と製造業における安全確保の心構えについて説明できる。
  (4)科学者・技術者の社会での役割と責任を自分の言葉で説明できる。
  (5)内部告発,説明責任,製造物責任など技術者行動に関する倫理的用語を理解し説明できる。
  (6)21世紀の技術者のあり方について自分の考えを表明できる。

<授業計画>
第1回 技術者倫理は何故必要か
  技術への信頼を失わせるような事故や不祥事の多発に対して、技術者の社会的責任が大きくなっていること、科学技術の発展と技術者の社会的責任について学ぶ。
第2回 化学産業の特徴と発展の歴史  
  戦後の化学産業の発展の経緯を振り返り、公害問題、安全性の問題、プラントの安全などの問題を克服してきたことと、化学産業が開発ウエイトの高い産業で、そこには常に事故の危険が潜んでいる。発展の事例は、洗剤産業を事例として具体的に説明する。
第3回 化学プラントの安全確保
  化学産業の安全を確保するための基礎知識を紹介し、幾つかの事故事例から技術者倫理との関わりを学ぶ。
第4回 産業事故と製造業の安全確保
  一連の産業事故と、その再発防止のための報告を紹介し、日本の製造業の抱えている課題(設備の老朽化、人員構成の変化と技術伝承、経営者の責任)を理解する。併せて、安全確保のための5Mと4Eさらにヒューマンファクターについて学ぶ。
第5回 仮想事例から学ぶ技術者の行動  
  事例研究:4つの事例を取り上げる。事前にケースに関するレポートを提出し、それぞれの考え方を学ぶ。
第6回 プロフェッショナルとしての技術者の行動―1(内部告発)
  チャレンジャー号爆発事故を取り上げ、技術者の行動を考える。事故を予知していた技術者の行動と内部告発に至った経緯を知り、技術者のプレゼンテーションの重要性と内部告発について考える。
第7回 プロフェッショナルとしての技術者の行動―2 (説明責任)
  JCO事故、もんじゅ事故など原子力関係の事故を取り上げ、なぜ、化学プラントなら問題にならないことが存亡に関わる事故となるかを学ぶ。併せて、説明責任について考える。
第8回 プロフェッショナルとしての技術者の行動―3(リスクマネジメント)
  人体に絡んだ事故として、雪印集団食中毒事件、薬害エイズ、を取り上げ、事故後の対応の重要性を学ぶ。基本は、人体の安全を最優先に考えることである。
第9回 プロフェッショナルとしての技術者の行動―4(製造物責任)
  カネミ油症事件、カビ取り防止剤の事故を事例として、製造物責任(PL法)の考え方と、施行後の製品開発への影響を考える。
第10回プロフェッショナルとしての技術者の行動―5(企業倫理)
  自動車リコール事件、自動回転ドア事故の背景と再発防止について一緒に考える。併せて、企業不祥事に対する経団連の対応、企業倫理の基本とコンプライアンスを説明する。
第11回化学物質の安全管理―1  
  化学物質の生体への作用は、摂取する量によって強くなり、どのような物質にも一定量(閾値)以下では生体に作用しない。家庭用品は生体に影響しない範囲で用いられ、医薬品は作用が認められる量で使用される。このことを合成洗剤をもとに説明する。
第12回化学物質の安全管理―2  
  PRTRやMSDSなどの基本について学ぶ。
  リスク評価方法について概説し、幾つかの会社の安全管理方法(物質安全+プロセス安全)を紹介する。
第13回21世紀の技術開発
  産業界での研究開発体制の変化、大学独法化に伴う動きなどを紹介し、自前主義から横の連携時代に移行してきたことを理解する。併せて、産業が大学の技術者教育に期待していること、JABEEを紹介する。
第14回期待される技術者  
  企業での研究開発経験をもとに、研究から開発、事業化、製品化に至る「死の谷」を紹介し、これを乗り越えるための先人達の思想を紹介する。

<成績評価方法及び水準>
出席状況および理解度をチェックするために毎回感想文を提出させる。
成績評価は期末レポート60%、毎回の感想文40%の割合で総合的に評価し60点(100点満点)以上を合格とする。期末レポートの提出資格は、出席率が70%以上(9回以上の講義出席)であること。なお、期末レポートの結果を含む評価が極めて低い場合には履修を認めないことがある。

<教科書>
「事故から学ぶ技術者倫理」
  執筆者 中村昌允
  出版社 工業調査会(2005年4月発売)

<参考書>
・ 社団法人日本技術士会訳編「科学技術者の倫理―その事例と考え方」(丸善)
・ NPO法人 科学者技術倫理フォーラム編「説明責任・内部告発」 (丸善)
・ 西原英晃 監訳「工学倫理入門」(丸善)

<オフィスアワー>
 工学院大学 金曜日4限
 東京農工大学 大学院技術経営研究科 電話 0423−88−7776

<学生へのメッセージ>
 私は約15年前になるが2名の方がなくなられる爆発事故に関係した。その後、各種の事故が起きるたびに原因と再発防止、さらにそこでの技術者の行動、自分ならどうしたであろうかを考えてきた。 
 そこから得た教訓と、企業における30年の研究技術開発の経験、さらには日本の化学産業の抱えている問題について、この講義を通して皆さんに伝えたい。
 21世紀に羽ばたく技術者になっていただきたい。

 

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